PrimaVera Coffee

Introduction
プリマヴェーラコーヒーは、4世代続くコーヒー生産者です。創業者のナディーンは31歳の女性で、農園主で輸出業者の父を受け継ぎ、2013年に同社でスペシャルティ・コーヒーのマイクロロット部門を立ち上げました。彼らは自社所有の農園のほかに、ウエウエテナンゴやフライハーネスを中心とした250件にも及ぶ小規模生産者と繋がりを持ち、そのコーヒーチェリーを自社のミルで精製しています。なぜ最も有名な産地アンティグアではなく、ウエウエテナンゴやフライハーネスに注力しているかというと、アンティグアはすでに大きな輸出業者に独占されており、価格は高く、面白いロットが手に入らないとのことでした。彼らは日本では手に入りにくいマイクロロットへのアクセスを可能にする、貴重な存在です。彼らがユニークなのは、自身がエクスポーターとしてだけではなく、インポーターとしても機能している点です。北米とオランダにオフィスを構えています。アジアにおいてはインポーターの機能が無いので、TYPICAへの参画が実現しました。彼らのコーヒーを日本に紹介するのは、私たちが初めてとのことです。

Person
私たちがプリマヴェーラコーヒーと出会ったのは、昨年のAmsterdam Coffee Festivalでした。たまたま参加したカッピングセッションで、彼らのコンセプトとクオリティに共感し、コミュニケーションを取るようになったのです。創業者のナディーンは、アメリカの大学で学び、イギリスで金融の仕事をして、やっぱりコーヒーの仕事がしたくて故郷に帰ってきたそうです。偶然、若かりし頃のエチオピアのモプラコ社の代表エレアナと同じストーリーです。小柄で、可愛くて、時折ファニーな彼女が世界中のバイヤーとビジネスをしている姿は、とてもかっこよく見えます。同世代の女性ということもあり、ざっくばらんに話せるナディーンとの未来がすごく楽しみです。

Location

HQ

Dry mill at Santa Rosa

Transparency
彼らは自身のHPにてすべてのプロセスにおけるコストと価格を開示しています。

Peralta Coffees

Introduction
ペラルタコーヒーは、20世紀初頭から続く伝統ある生産者です。NYのニカラグア専門ロースターCafé Integralのオーナー、Césarに紹介してもらいました。ペラルタコーヒーは、ニカラグアの名産地ディピルトとサンフェルナンドに農園を所有し、モソンテに広大なドライミルとカッピングラボを所有しています。様々な実験的な精製方法を積極的に採用し、ユニークなコーヒーを作り、世界中の名だたるバイヤーに紹介しています。

Person
オーナーのオクタヴィオは、優しく繊細な心を持つ男性です。コーヒーや人への接し方に、深い思いやりを感じます。彼らのコーヒーの品質はおしなべて高く、その理由はそのような「心」にあると確信しています。

彼は優れたコーヒー生産者でありながら、優れた経営者でもあります。オクタヴィオの自宅はオコタルにありますが、彼は自宅の隣で、精肉のビジネスも営んでいます。日中、自宅の中庭を解放して、彼らのお肉を提供するちょっとしたレストランをオープンしています。そのレストランで食べた食事が、今回の旅で最も美味しい食事となりました。

About Farms

ペラルタコーヒーは5つの農園を所有しています(Finca Coffee Libreを除く)。

Finca Santa Maria de Lourdes サンタ・マリア・デ・ルルド農園
標高: 1150〜1300m
面積: 32ha

険しい山道を四駆のバンで登り切ると、山の谷間に小さなウェットミルが見えます。農園の道中には、コーヒーチェリーを詰める袋を活用したゴミ箱を頻繁に見かけました。自然環境の保護への配慮も行き届いています。自然豊かで静かな環境で、農園を見下ろす崖の上に座っていると、鳥の声しか聞こえません。ウェットミルではPenagos製のパルパーを使用しています。この農園は、ペラルタの農園の中で最後に収穫が終わる農園です。収穫は1月から始まり4月まで続きます。平均年間生産量は、1000袋(69kg袋)です。

Finca Coffee Libre コーヒー・リブレ農園
標高: 1600m

韓国の有名ロースターCoffee Libreが所有する農園です。Coffee LibreのオーナーPilは、ニカラグアやグアテマラに農園を所有し、ダイレクトトレードを実現しています。彼はペラルタのドライミルの近くで結婚式を挙げるほど、この地に愛着を持っています。彼らの農園を訪れカッピングさせて頂いたところ、ユニークで品質が高かったので、日本のロースターさんにオファーさせてもらえるよう頼んでもらいました。山の頂上付近にあるこの農園は、白い花畑に囲まれた天国のような農園です。コーヒーの木はよく手入れされており、とても健康な印象を受けました。Pinhalense製のパルパーを採用したウェットミルでは、Anaerobic Lactico(牛乳を加えた嫌気性発酵)など、ユニークな精製方法が多く試されています。

Finca El Bosque エル・ボスケ農園
標高: 1250〜1560m
面積: 42ha

エル・ボスケ農園は、三つの丘の中腹に跨っています。ウエットミルではPenagos製のパルパーを使用し、非常に少ない水で精製を行うことが可能です。また、この農園は豊かな水源に恵まれているので、農園に必要なすべての電力を水力発電で賄うことができます。レインフォレスト・アライアンスの認定を受けており、すべてのコーヒーが日陰栽培で生育されています。平均年間生産量は、1200袋(69kg袋)です。

Finca La Argentina ラ・アルジェンティーナ農園
標高: 1150〜1300m
面積: 75ha

ラ・アルジェンティーナ農園は、彼らの家族が経営する最も古い農園です。ウェットミルでは、Pinhalense製の新しいパルパーを採用し、水の消費量を最小限に抑え、環境負荷を軽減しています。

Finca La Cascada ラ・カラカスカーダ農園
標高: 1170〜1300m
面積: 72ha

「滝」という名前を持つ農園には、6つの小川と滝が流れています。その流れは、やがてひとつの川に集約されます。この農園はディピルトに隣接しているため、訪れやすいロケーションです。

Finca Samaria サマリア農園
標高: 1320〜1450m
面積: 45ha

サマリア農園は、ホンジュラスの国境に接した農園です。隣の農園まで歩いて行くと、国境を越えるほどの近さです。自生するシェイドツリーを利用し、様々な品種が育まれています。

Location

HQ

Dry mill at Mozonte

オクタヴィオの自宅兼レストラン

Transparency
彼らはコーヒーの生産、精製、輸出を一貫して行っています。様々な区画、品種、精製方法のマイクロロットは、収穫からロースターの手に渡るまで、完全に追跡可能です。

Nicaragua 2020

*この記録は2月に中米へ渡航した時に記した文章である。新型コロナウィルス以降、世界の見え方がまったく変わってしまったことに驚く。

ニカラグアからグアテマラへ移動する飛行機でこれを書いている。一時間ほどのフライト。眼下には隆起した大地や名もない湖が見える。まだまだ目に映していない風景、出会っていない人々が無限に存在することに、とてつもない自由さを感じる。

2018年の政治闘争によってさらに危険なイメージが強まったニカラグアだが(実際何人もの人に「ニカラグアは近年危険みたいだけど大丈夫?」と心配された)、実際に身を置いてみると、穏やかで、どこか日本に似た印象の国だった。

どこか、というかかなり、と言った方が近いかもしれない。首都マナグアからコーヒー生産地にほど近いオコタルまで車で移動したのだが、まるで日本の田舎のように田んぼが延々と続き、時々郊外型の街が現れる。ガソリンスタンド、ちょっとした飲食店。田舎の方まで来ると鄙びた温泉街のような風情があり、山に入ると松の森に囲まれ、大小の石が転がった清流が流れている。すれ違うのはトヨタなどの日本車ばかり。「ここって北陸かどっかだっけ?」と、少し倒錯した感覚を覚えた。人の感じは温かく控えめで、多くの人は英語を話さず、それも日本のよう。観光客は少なく(特にオコタルは、世界的なコーヒー名産地ではあるが、観光資源があまりない。欧米のバックパッカーを一組しか見なかった。アジア人には会わなかった)、のんびりとした雰囲気だった。ニカラグアの滞在は、エキサイティングな冒険というより、田舎のおじいちゃんの家を訪れた。という感覚の方が近いかもしれない。

この国が、外務省の危険度地図によると、中程度の黄色に塗られているのが不思議だ。私が訪れたマナグアとオコタルに限って言えば、危険や怪しい雰囲気を一度も感じなかった。2018年にニカラグアで起こった闘争について調べると、凄惨な写真が次々と出てくる。ニュースの記事などをみると、これがこの地で起こっていたとはにわかには信じ難い。ある生産者によると、2018年は国の機能が麻痺していたため、コーヒーを輸出することが叶わなかったという。それによって、彼らは多くの従業員と売上を失った。

火山国であるため地震も多く、ハリケーンに見舞われることもあり、決して豊かとは言えないニカラグアという国の宝石であるコーヒーを取り扱うと思うと、その過程の一つ一つを大切にしたいと、改めて思える。

Oromia Coffee Farmers Cooperative Union

Introduction

オロミア農協についてはこちらのページで詳しく説明しています。
エチオピアのコーヒー流通を語るとき欠かせないのは、協同組合の存在です。それまでルールや知識なく商売をしていた小規模生産者に仕組みが与えられたのです。日本とは縁が深く、マーケティング部門のElsaは、昨年フェアトレードの講演会に呼ばれて大阪を訪れたと言っていました。地方の精製所のマネージャー、Amunaと一緒に、GujiにあるKilenso Rasa cooperativeのドライミルとウェットミルを訪れました。企業が運営する精製所より素朴な印象ですが、村と精製所が溶け込んでいて、こどもが集まり、協会からは歌声が聞こえるような素敵な場所でした。また、ガーデンコーヒーとセミ・フォレストコーヒーをそれぞれ訪れ、その違いを肌で感じました。

Person
Kilenso Rasa cooperativeを案内してくれたAmunaは、誠実で情熱的な印象の青年です。全力で彼らのコンセプトを伝えてくれ、丸一日かけてGujiの精製所と農園を巡ってくれました。自分の仕事に誇りを持っているようで、一緒にいて気持ちの良い人でした。

Location

Office in Addis

Kilenso Rasa cooperative

Semi-forest coffee farm

Transparency
オロミア農協は、純利益の70%を地方の協同組合(Primary Cooperative)に返還し、協同組合は組合員に返還します。

Sustainability
ECOCERT, JAS, Fair Trade, Rain Forest Alliance, UTZなどの認証を取得しています。

Photo Gallery

Moplaco Trading PLC

Introduction
モプラコ社はエチオピアで最も古い輸出業者の一つです。代表はHeleanna Georgalis。父のYanni Georgalisは、幼い頃から麻袋の印刷と計量の仕事を始めました。その後、Harrarに自社の精製所を作り、エチオピア全土に事業を拡大しました。モプラコ社は、父ヤンニの代から日本と親交が深く、ヤンニとエレアナは何度も日本を訪れています。モプラコ社は主要生産地に自社の精製所を構え、独自の品質を追求しています。また、エチオピア西部のShekaには自社の農園を所有しています。その農園はフォレスト・コーヒーで、コーヒーの他に、蜂蜜やターメリック、黒胡椒なども生産されています。

モプラコ社のヘッドオフィスは、首都アディス・アベバにあります。オフィスは倉庫街にあり、隣には倉庫の一部を改装したカフェ、Galani Coffeeがあります。腕利きのバリスタが、モプラコ社のコーヒー豆を使ったクリーンなフィルターコーヒーや、エスプレッソを淹れてくれます。おしゃれなインテリアが配された店内では、欧米の旅行者やビジネスマンがコーヒーを楽しんでいて、エチオピアにいることを忘れてしまうような空間です。

モプラコ社のみなさんは、穏やかで思いやりの深い方ばかりです。どの精製所もきちんと整理され、隅々まで掃除されていました。このような環境で精製されたコーヒーは、品質が高いに違いないと確信しています。

Person
私とエチオピアの関係は、エレアナに送った一通のメールから始まりました。彼女がそのメールに返信をくれなければ、きっとなにも始まりませんでした。母親のように優しく、ときに厳しく、私にエチオピアのイロハを丁寧に教えてくれ、様々な人を紹介してくれたのです。エレアナはヨーロッパの企業で働いていましたが、2008年、エチオピアでコーヒーのビジネスを継ぐことを決めました。国際感覚と経営者としての芯の強さ、そして女性らしい思いやりがビジネスを向上させたのだと感じます。

エレアナのオフィスを訪れたとき、彼女はスーツを着た大柄なアフリカ系の男性二人とミーティングをしていました。いつもとは違う強い口調で、時々ジョークを交えながら交渉する姿は、いつもの穏やかなエレアナとは違い、少し驚きました。ミーティングが終わると、エレアナはまたいつもの母親のような優しい雰囲気に戻り、私の隣に座りました。そのギャップに、エチオピアでビジネスの第一線を走り、様々な物事を乗り越えてきたエレアナの人生を垣間見たような気がしました。

どこまでも思いやりが深く、ビジネスウーマンとしても一流のエレアナを、私は深く尊敬しています。

Transparency
モプラコ社は、数多くの小規模生産者からチェリーを購入しており、金額はマーケットプライスに準じて支払われます。コーヒーチェリー1kgあたり、29Birr(約98円)支払います。6kgのチェリーから1kgのウォッシュドコーヒーが作られます。

Sustainability
モプラコ社は、コミュニティへの貢献の方法として、チェリーの購入価格を上げることを選択しません。購入価格を上げると無用な競争が生まれ、マーケットを乱すことになるからです。そのかわり、彼らは、Sidamo、Yirgacheffe、Shekaにある小学校に、毎年10,000USD(約100万円)投資しています。

Location

Office at Addis

Drymill at Yirgacheffe

Drymill at Chelelektu

Offering 2019

Sheka Kawo Kamina G1 Natural
Yirgacheffe Wonago Abaawelu G1 Washed
Yirgacheffe Gedeb Tamerate Alemayheu Gobu G1 Washed
Yirgacheffe Adame Moplaco G1 Natural
Yirgacheffe Anchaebe Moplaco G1 Natural
Yirgacheffe ECX G1 Washed

Photo Gallery

Wete Ambela Coffee

Introduction
Wete Ambela Coffeeは、生産者のMekuria Mergiaが立ち上げた個人経営のコーヒーカンパニーです。2018年創業のスタートアップで、YirgacheffeとGujiにそれぞれ精製所を、そしてGujiのAnferara(Mesina)に自社の農園を所有しています。エチオピアでは大手の輸出業者やエステイトコーヒーが主流である中、彼らのような個人経営の生産者は注目を集めています。初のクロップはヨーロッパや北米の輸入業社に高く評価され、カップオブエクセレンスに先駆けて2019年に行われたTraboccaのプライベートオークションで入賞も果たしました。

私は彼らのインディペンデントな姿勢に興味を持ち、リサーチを重ね、彼らとコンタクトを取りました。彼らはイルガチェフェとグジの精製所に招待してくれましたが、季節外れの集中豪雨によって道路が濁流で遮断され、グジへ行くことは叶いませんでした。イルガチェフェの精製所は、感動的なロケーションでした。ガイドがいなければ見つけられないような目立たない入り口から細い道を抜けると、山々を見渡せるような、広々とした眺望が広がります。後日、アディス・アベバにある彼らのオフィスを訪ねました。がらんとした、新しいのになぜか廃墟感が漂うビルの一角に、彼らのオフィスはありました。応接室にはまだ新しいソファと事務机がいくつか置かれていました。ここから彼らの物語が始まる。そんな予感を感じさせる場所でした。

Person
代表のMekuria Mergiaは長年コーヒーに携わり、小規模生産者と精製所をつなぐ仲買人のような仕事や、精製に関する仕事をしていました。2017年、ECXの規制が緩和され、ライセンスを取得すれば個人所有の精製所とバイヤーが直接取引ができるようになったことを契機に、この会社を設立しました。貫禄のある風貌をしていますが、ビジネスの感覚は鋭く、SNSでのコミュニケーションにも長けています。マーケットを熟知し、リテラシーが高い彼がこれから何を仕掛けるのか、とても楽しみです。

Location

Office at Addis

Wetmill at Yirgacheffe

Transparency
彼らは小規模生産者からチェリーを購入しており、コーヒーチェリー1kgあたり、0.9USD(約94円)支払います。100kgのチェリーから15kgのパーチメントコーヒーが作られます。

Sustainability
コーヒーチェリーを購入する際に小規模生産者名と納品数量を登録し、クオリティが高かった場合、年の終わりに追加の賃金を支払います。また、すべてのサプライヤーのこどもに学用品を提供しています。

Offering 2019

Yirgacheffe Wote Konga G1 Washed
Yirgacheffe Wote Konga G1 Natural
Guji Hambela Wamena G1 Washed
Guji Hambela Wamena G1 Natural
Yirgacheffe Gedeb G1 Washed
Yirgacheffe Gedeb G1 Natural

Photo Gallery

エチオピアのコーヒー流通について(2)

国際価格の変動に翻弄される生産者の収入を安定させるため、二つの大きな動きがありました。

一つ目が、農業協同組合です。

1999年、オロミア農協(Oromia Coffee Farmers Cooperative Union)が設立されました。オロミア農協は、フェアトレード、オーガニック、レインフォレストなどの認証を取得し、オロミア州のコーヒーを、認証付きのコーヒーとして国際的に流通させることに成功しました。粗利益の70%は地方の協同組合(Primary Cooperative)に還元される仕組みです。

地方の協同組合には農協からトレーナーが派遣され、サステナビリティに配慮した生産方法を伝えます。

オロミア農協の取り組みは『おいしいコーヒーの真実(英題:Black Gold)』という映画になり、一躍注目を集めました。

その後、2008年、エチオピア商品取引所(ECX: Ethiopia Commodity Exchange)が設立されました。ECXはエチオピア政府と提携した民間企業です。ECXはコーヒーの他にも、ゴマ、とうもろこしなど穀物全般を取り扱っています。

それまで、コーヒー生産者に市場価格を知るすべはなく、マーケットにチェリーを売りに行っても価格交渉の余地はなく、品質による判断は一切なされませんでした。そこにメスを入れたのがECXでした。

ECXは、生産者に市場価格の情報を共有しました。ECXのWebサイト、取引所の電光掲示板、SMS、電話(フリーダイヤル)で、誰もが情報を入手することができるようになりました。コーヒーを九つの主要生産地に分類し、Yirgachefe G1、Sidamo G2のように等級分けしました。

農協とプランテーションコーヒー(民間企業や国が所有する農園)以外のコーヒーは、ECXにて生産地認定とグレーディングを受けることが義務付けられ、オークションで取引されるようになりました。

ここでポイントとなるのが、ECXは、当時約96%を占めていたコモディティ・コーヒーのための仕組みであり、スペシャルティ・コーヒーの流通を主眼に置いてはいないという点です。

ECXによって、エチオピアに流通するコーヒーは、生産地の地方名とグレードしか分からない状態になり、それまで、特定の精製所とダイレクトトレードをしていた輸入業者にとっては、トレーサビリティが不透明になり、信頼関係や精製所に対する投資が意味をなさなくなりました。

2009年、ECXとSCAA(現在のSCA)との協議が持たれ、Qグレーダーによる品質評価を導入するなど、スペシャルティ・コーヒー業界への歩み寄りがありました。

また、2017年、ECXは規制を緩和し、個人経営の精製所であってもライセンスを取得すれば直接輸出することが可能になりました。これによってトレーサビリティは確保されたと言えます。

この規制緩和によって、新たなスタイルの輸出業者が台頭してきています。例えば、精製技術を持った人や、コーヒー農園の土地の所有者が輸出のライセンスを取得し、個人で輸入業を開始しているのです。

2019年にオランダの輸出業者Traboccaが開催したエチオピアのオークションThe Ethiopian Cupのウィナーの中にも、そのような新星が散見されました。

2020年は、エチオピアで初めてCup of Excellenceが開催されます。これによってエチオピアのスペシャルティ・コーヒーはどのような変化を遂げるのか、注目を集めています。

参考サイト:Promar Consulting

エチオピアのコーヒー流通について(1)

前回は、エチオピアのコーヒー生産地についてお話しました。

生産地で収穫されたコーヒーは、どのような経路で流通し、私たちの手元に届くのでしょうか。コーヒーの流通の歴史と仕組みを見てみましょう。

コーヒーは、小麦やとうもろこしなどの穀物と同じコモディティ商品(価値がすべて同じ商品)で、先物取引が行われます。先物取引とは、現物ができあがる前に、あらかじめ未来の価格を決めておくことです。購入する側にとっては値上がりのリスクヘッジになりますし、販売する側にとっては未来の収入を確定できます。投機家は値上がりしそうな銘柄に資金を投入し、利潤を得ます。

アラビカ種はニューヨーク商品取引所で、ロブスタ種はロンドン商品取引所で先物取引が行われます。

アラビカ種の先物取引の銘柄は、下記の三つに分けられます。

・コロンビアマイルド(コロンビア、ケニア、タンザニアのウォッシュド)
・アザーマイルド(その他生産国のウォッシュド)
・ブラジルナチュラル(ブラジルやエチオピアなどのナチュラル)

主に需要と供給のバランスで、毎日国際価格(C-market price)が変動します。国際価格が大きく上下することで、生産者の生活は不安定になります。

1962年に、国際コーヒー機関(ICO: International Coffee Organization)が、国際コーヒー協定(ICA: International Coffee Agreement)を定めました。流通するコーヒーの量を制限することで、需要と供給のバランスを取り、価格の安定を図ったものです(輸出割当制度)。しかしながら、生産国や消費国の不満、アメリカのICO脱退を契機に、1989年に輸出割当制度は停止しました。

輸出割当制度の停止後も、コーヒー消費量は年々増え続け、投機の対象としての人気は衰えず、コーヒーの国際価格は大きく上下しています。また、最大の生産国ブラジルの生産量や経済が大きく影響します。2019年にコーヒーの国際価格は大暴落して、生産価格より国際価格が安くなるとも言われましたが、その背景には、ブラジルが豊作であったこと、レアル安(ブラジルの通貨が安くなった)がありました。

エチオピアの生産量は世界の約5%と、国際価格に与える影響は少ないにも関わらず、先物価格で取引されるので、生産者は翻弄されてしまいます。そのような状況の打開策が、いくつか立ち現れます。

(つづく)

エチオピアのコーヒー生産地について。

エチオピアのコーヒー生産地は、大きく四つのタイプに分かれます。

フォレストコーヒー(生産量の約10%)
森林に自生する天然のコーヒー。最も伝統的な生産地ですが生産効率が低いので、後述のセミ・フォレストやガーデンコーヒーにどんどん移り変わっています。JICAが2003年より森林コーヒーを保全する活動を開始しています。

セミ・フォレストコーヒー(生産量の約35%)
天然のコーヒーの森を手入れしたもの。雑草の除去、日照量の調整のための伐採などが行われます。土地の所有者は存在します。

ガーデンコーヒー(生産量の約50%)
農家の裏山や庭に、農家の手によって植えられたコーヒー。バナナやアボカドと一緒に植えられることが多く、収穫したら精製所、農協などに持ち込んで現金化します。

プランテーションコーヒー(生産量の約5%)
または、エステイトコーヒーとも呼ばれます。民間もしくは国営の大規模農園。生産から輸出までワンストップで行う。特定の品種を植えたり、テクノロジーを活用し、生産効率や品質を上げることができます。農園名が付いているエチオピアのコーヒーは、ほとんどこちらに分類されます。ゲシャビレッジ農園などが有名です。

エチオピアのコーヒーの約90%がオーガニックで栽培されています。エチオピアの土壌や気候はこの上なくコーヒーの生育に適しているので、剪定や化学肥料はほとんど必要とされません。

車でイルガチェフェの山に入ると、コーヒー、バナナ、アボカドなどが混ざった森に囲まれます。その隙間に土壁やトタンで造られた素朴な民家が見え隠れします。柵で区切られた農園を目にすることはほとんどなく、森と庭の境界が曖昧で、コーヒーの木は生活に溶け込んでいます。

参考サイト: EtBuna