Single Estate Coffee Rosters バス・バーグホン

Single Estate Coffee Rosters

バス・バーグホン

「夢だけでは、いいコーヒーを届けられない」ブラジルの“美しい”農園に魅せられた創業者の哲学

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オランダを拠点に、コーヒー生豆のダイレクトトレードを行うSingle Estate。創業は2007年。継続的、安定的においしいコーヒーを供給すべく、2009年に自家焙煎をスタートし、2019年には社内のバリスタからエアロプレスの世界チャンピオンが誕生。同年にはコーヒーの魅力を直接消費者に伝える場として、コーヒーバーを開店。「コーヒーもビジネスとして取り組まなければならない」と語る創業者のバスさんに話をうかがった。

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スペシャルティコーヒーを身近なものに

レストランやバーなど100以上の顧客に自家焙煎したコーヒー豆を卸している傍ら、コーヒーバーを運営するシングルエステート。2007年、27歳で同社を創業したバスは、時代の先を行くダイレクトトレードを実現する同社の経営者として成長を牽引してきた。

「誤解を恐れずに言えば、よいコーヒーを作ることは簡単です。いい農園から高価な豆を買い、丁寧に焙煎すれば、いいコーヒーは作れますが、それはビジネスにはなりません。いいコーヒーは人によって違うので、商品と顧客ニーズをマッチさせないといけないんです。世界最高品質のコーヒーを求めるお客さんを見つけることにやりがいはありますが、そういうコーヒーを好んで買う人は一握りしかいませんから」

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2019年に「誰でも気軽に入れる」コーヒーバーを開店したのも、その考えによるものだ。普通のコーヒー店にはしたくないという思いで、バリスタが農園のストーリーやスペシャルティコーヒー、抽出方法などについて客に直接伝えられる場を設けている。

「この店はいわば、私たちの取り組みやコンセプト、哲学を伝えるショールームです。店づくりの背景には、バリスタは裏方ではなく、お客さんを上品にもてなし、コーヒーの知識を伝えるいいホストであるべきだという考えもあります。おいしいスイーツをつくる腕利きのパティシエを雇っているのも、『魅力あるコーヒーバー』でありつつ『魅力あるレストラン』でもあるためなんです」

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大きな可能性を感じたコーヒービジネス

シングルエステートの創業者であるバスにとって、スペシャルコーヒーとの出会いは運命的だった。2007年、父と旅行に出かけた際、友人のつながりで偶然訪れたブラジル・サンパウロのコーヒー農園ではじめて、コーヒーの多様性に触れたのだ。

「コーヒー豆にはいくつかの精製方法があり、ナチュラルとウォッシュドでは味が違うことを、農園のカッピングテーブルで知りました。品質を高めるため、よりよい収穫方法や精製方法を追求する彼らの姿も印象的でした。コーヒーの世界がこんなに奥深いとは、まったく気づいていなかったんです。

一方で、滞在中、美しい自然に囲まれたいくつかの農園や地域の保育園を訪れるなかで知ったのは、コーヒー農家の多くが貧しい地域に住んでいること。もしコーヒービジネスに携わるならば、その現状を変える責任と可能性があると感じたんです」

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のちに協業する生産者は、農場に学校を建設し、農場で働く人々の子どもたち全員に学校教育を提供していた。また、レインフォレスト・アライアンスやUTZ認証を取得するために、ITを駆使して近隣の農場を支援したりもしていた。ダイナミックな変化を社会に与える仕事は、IT企業で働く会社員だった27歳のバスに新鮮な感覚をもたらした。

「地球を救うつもりはないけれど、人々や地球にとっていいことをしたいなと。ソフトウェア会社では十分なお金を稼いでいましたが、ソフトウェアを販売して利益を生み出す営利企業だったので、サステナブルな満足感を生み出せないことに物足りなさを感じていました。

一方で、コーヒービジネスは挑戦的で、社会や環境に必要なイノベーションをもたらす可能性がある。ビジネスという枠組みでは捉えきれない仕事に魅力を感じたんです」

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着実に進めてきた事業拡大

コーヒーのことなどまったく頭になかった出発前から一転、帰国後のバスの頭はコーヒーでいっぱいだった。さっそく、チームメンバーになり得る「コーヒーのプロ」を探し始めたなかでひとりのキーマンと出会う。オランダ国内のバリスタチャンピオンシップで審査員を務めていた元シェフだ。

「コーヒーの香りに精通していて、無限に広がるその世界に惹かれていた」元シェフのほか、数名の専門職スタッフを仲間に引き入れたバスは、シングルエステートを2007年に創業。コーヒーの生産地から豆を仕入れてロースターなどに販売する輸入事業を開始した。

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だが、貿易で取り扱う量は年間でコンテナ6台分程度。質の高い豆を仕入れることはできたが、収穫後2週間で売り切れたが最後、仕事はなくなってしまうのだ。そこで生産者と消費者をダイレクトにつなぐ焙煎に事業を転換し、「より付加価値をつけ、顧客に本当の意味で農園のストーリーを届けることにした」という。

シングルエステートは創業以来、毎年、主に中南米、南米の生産地を訪れ、農園の開拓を続けてきた。現在はブラジルのみならず、グアテマラやエルサルバドル、コスタリカなどからも豆を調達。そのうち85%がダイレクトトレードによるものだ。2kgの小さな焙煎機から50kgと15kgの焙煎機へ。その変化は、シングルエステートが遂げてきた10年間の成長を物語っている。

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「品質を守るために、事業を拡大する前には必ずロースタリーに投資していました。拡大を急ぐと、品質の安定性を失うことがわかっていたからです」

その堅実な姿勢こそ、コーヒーをサステナブルなものにする重要なファクターとなる。

「私たちはただのドリーマーではありません。コーヒーの世界で大きな夢を抱き、すばらしいことをしている人たちにはたくさん出会ってきたけれど、彼らのビジネスはスタートアップ時から成長していません。もちろん本人たちが好きで楽しんでいるのならそれでいいのですが、アップデートしたり、拡大したりしようと思えば戦略が必要なんです」

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サステナビリティの鍵を握るスペシャルティコーヒー

「コーヒー業界でサステナビリティを実現するためのベストな解決法は、寄付ではありません。これまで私は、コーヒーのサステナビリティについて議論する場に数多く参加してきましたが、最後には決まってお金の話になります。コーヒーの流通経路がどこかで分断されるとき、生産者は必ず不利な立場に立たされ、正当な対価をもらえない、といったことが起こるのです。

それを改善できる唯一かつベストな方法が、スペシャルティコーヒーだと私は考えています。農園をうまくマネジメントし、顧客と良好な関係を築いて、コーヒーの品質を向上させられれば、お互いに収益を増やすことができるはず。

そのお金をしかるべきところに投資すれば、コーヒーの流通問題は解決に近づくでしょう。農園で働く人々の子どもたちのために保育園や学校を建てるプロジェクトが、財政的に行き詰まらないように働きかけることが、私たちコーヒーチェーンの責任だと思います」

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早くからダイレクトトレードに取り組んできたシングルエステートだが、苦い思い出もあるという。

グアテマラにて伝統的な農法でコーヒーを栽培する家族経営の農園と取引を始めてから3年目だったろうか。さび病が流行したその年、収穫量の50%が被害に遭い、熟しすぎた豆や未熟な豆が数多く出てしまった。だが彼らは生きていくためにそれらを良質の豆と混ぜて精製し、出荷するという道を選んだのだ。

「彼らの気持ちは理解できましたが、私たちも品質が不十分で、かつ高価格なコーヒーを提供することで顧客を裏切るわけにはいかなかった。信頼できるパートナーではなくなったと感じた私たちは、仕入れ先を変えるという苦渋の決断をしたのです」

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シングルエステートの面々は、創業以来、毎年、ブラジルや中南米の農園を訪れる「オリジントリップ」を欠かさない。買い付ける豆を選びながら、生産者たちと現状や今後の展望について語り合うのだ。現地で農薬の使用量などを調査したりしないのは、積み重ねてきた信頼関係があるからだ。

「帰国後は、現地で選んだ豆がいつ届けられるのか、いつも首を長くして待っています。焙煎後のカッピングタイムは、現地を訪れた思い出がよみがえってくる最高の瞬間ですね」

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MY FAVORITE COFFEE人生を豊かにする「私の一杯」

グアテマラやブラジルなどの生産者から届けられたフレッシュなコーヒー豆を焙煎し、やっぱりおいしいと確認する瞬間に勝るものはありません。そのおいしさをお客さんと共有できるのは幸せなことであり、誇らしいこともである。自身が直接訪問し、豆が届くのを待ち焦がれてきたからこそ、その瞬間はより特別なものになりますね。

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