LATTEST ラテスト / 宗広 裕美

LATTEST

ラテスト / 宗広 裕美

世界一の女性バリスタを世に送り出す。常に一歩先を行く「LATTEST」のいま

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「世界一の女性バリスタを世に送り出す」というコンセプトのもと、2012年2月、東京・表参道にオープンしたエスプレッソバー「LATTEST」。店内に入るとクールな内装に、コンクリート流し込みの無骨なカウンター。そこでエスプレッソの抽出やラテアートを披露するのは、女性バリスタたちだ。

カフェ激戦区ともいえる東京・表参道で「LATTEST」がオープンして10年。現在は、6つの店舗を多角的に展開している。「LATTEST」のこれまでとこれからについて、マネージャーの宗広裕美さんに話を聞いた。   ※ 文中敬称略

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ガツンと強力なラテを追求する

オリジナルのショットグラスに冷たいミルクを注ぎ、その上に濃厚なエスプレッソを直接抽出した「ラテスト」や「トリプルショットラテ」は、ガツンと強力。一杯のラテの中には通常の3倍量のコーヒー豆を使用し、濃厚なエスプレッソが抽出されるためだ。さらに、コーヒーは抽出料が多くなるにつれ苦味やえぐみも出やすくなるため、エスプレッソの抽出量を10〜20mlと少なくしている。そうすることで、コーヒーの美味しい部分だけを贅沢に使うことができるのだと言う。

「ミルクの上にエスプレッソを注ぐと、コーヒーオイル(豆に含まれる油分)によって、すぐにミルクと混ざらずに、エスプレッソが一瞬、浮いた状態になるんです。最初のひとくち目は温かいエスプレッソの味がくるんですが、ふたくち目からは冷たいミルクの味が追いかけてきて、温かいのと冷たいのと、そしてエスプレッソの苦味とミルクの甘味を両方味わえるのがおもしろいんです」

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「LATTEST」は、「SAWADA COFFEE」の澤田洋史が監修したエスプレッソバーだ。澤田は、2008年に米国シアトルで開催された「ラテアート ワールドチャンピオンシップ」において歴代最高スコアでアジア人初のチャンピオンに。以来、国内外で多くのカフェを手掛けてきた存在だ。

「『LATTEST』がオープンした2012年頃は、渋谷区富ヶ谷に『FUGLEN TOKYO』がオープンするちょっと前くらいで、コーヒー業界のバリスタといえば男性が占めていた時代だったんですね。だから女性バリスタをアイコンにするのは独自性があっていいね、ということから始まったと聞いています」

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看板メニューの「ラテスト」は、澤田がプライベートな時間に好んで飲む、いわば“まかない”的なドリンクだったのだとか。

「マキアートをつくると、ミルクピッチャーの底に必ずミルクが残ってしまうんです。それがもったいないと、ある時ミルクの上に直接エスプレッソを抽出して、あえて混ぜないで飲んでみたんだそうです。澤田さんがつくって楽しんでいるのを見て、お店のバリスタたちも真似するようになって。『LATTEST』がオープンするにあたって、看板メニューとなったのが店舗名と同じ『ラテスト』なんです」

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アルバイトでもいいから、この人と働きたいと思った

宗広と「LATTEST」との出会いは、9年前にさかのぼる。大学で生物学を学び、製薬業界で働き始めた宗広は、自分にはオフィスワークが向かないと感じ、漠然と転職を視野に入れるようになった。3年は働くという両親との約束がありながらも、就職して5年が過ぎようとしていた。

そんな折、週末に表参道でランチをした帰り、偶然にも「LATTEST」に足を踏み入れることになる。深煎りを好んで飲んでいた宗広は「ラテスト」の美味しさに衝撃を受け、マネージャーとの会話のやりとりから、この人と働きたい!と感じた。宗広が「LATTEST」で働くきっかけは、当時のマネージャーに、なかば衝動的に連絡をとったことにあった。

「当時のマネージャーが、とても気さくで魅力的な人だったんです。店舗に電球が飾られていたんですが、一緒に列に並んでいた人と「こういうのが欲しい」と話していたら、どこで買ったのかを教えてくれて。さりげなく教えてくれたことに、すごく感動したんです。ちょうどその時『LATTEST』がアルバイトの募集をしていたんですね。アルバイトでいいので働かせてくださいと数日後に連絡をしました」

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ダブルワークで、週末だけ「LATTEST」で働くようになったが、週に1度の勤務では、思うようにラテアートの技術を習得することも難しかった。そうして1年が過ぎた頃、もっとしっかりとコーヒーと向き合い、店舗に貢献できる人になりたいと思うようになった宗広は、社長に懇願し、製薬業界を辞めて「LATTEST」の勤務に専念することに。

「学生の頃にスターバックスでアルバイトをしていたので、コーヒーのある空間の居心地の良さや魅力は知っていたんですが、最初の頃、緊張しながらも淹れたラテアートに『わーすごくきれい』と言ってくださったり、カップを返すときに『とても美味しかった』と声をかけていただいたり。その度にすごく感動していました」

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シェアロースターから、自家焙煎へ

宗広は、目標としていたラテアートの技術を磨き、さらにコーヒーにのめり込むようになっていった。宗広の前のマネージャーが神保町でシングルオリジンにこだわり持つ「GLITCH COFFEE & ROASTERS」のスペシャルティコーヒーに衝撃を受け、オーナー兼バリスタの鈴木清和との交流が始まったことから、2016年に「LATTEST」は焙煎も手がけるようになる。

「焙煎にも興味があったんです。ずっとコーヒーに携わってきたけど、私たちはエスプレッソ用のブレンドコーヒーしか知らなかったんですよね。もっと豆のことを知りたいし、ドリップもやってみたいねということで、私の前のマネージャーが開拓してくれました」

まずは「GLITCH COFFEE & ROASTERS」で週に1度、シェアロースターをさせてもらうことに。最初の2ヶ月ほどは、鈴木にずっと隣についてもらい、レシピだけでなく、タイミングやメンテナンスのやり方までを教えてもらった。

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「驚いたんですが、コーヒー屋さん同士の繋がりはとても強くて、何か困ったことがあればすぐに助けてくれる関係性なんです。そこには、バリスタの実力をレベルアップさせる、日本から世界に発信できるようなバリスタを育てるという鈴木さんのお考えもあったと思いますが、いずれにしてもライバルという感じではなくて。

レシピを包み隠さず教えてくれるって、すごいことですよね。とはいっても、同じレシピでも、数秒タイミングが変わるだけで味はぐんと変わるし、教えてもらっているレシピで自分たちが鈴木さんたちの味を出せるわけでもない。だから焙煎はおもしろいんです」

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「LATTEST」が焙煎を始めてから2年。宗広は、焙煎を引き継ぐことに。1日数時間ほどの焙煎に全集中力を注ぎ、毎回手に汗を握るような緊張をしていたという。

「焙煎はやり直しができないのが怖いところです。毎回へとへとになっていました。より甘さが出るようにと、前のマネージャーは料理をイメージして豆を焼いていたんです。野菜にゆっくりと火を通すと甘くなると、釜の中で起こっていることを想像しながら焙煎していました。

コーヒーは化学だなって思うんです。ドリップにしても、蒸らす間にどんなことが起こっているのかを想像しながら淹れています。理系の出身であることが、ここで活きているような気もしますね」

2019年には、店舗の近くに焙煎用のスペースを借りて、本格的に自家焙煎をスタート。プロファイルに少しずつ手を入れて、ようやく現在提供しているラインナップと味にたどり着いた。

「シェアローストをしている頃は、中煎りくらいまでしかやっていなくて。深く焼こうとすると、焙煎機の温度もどんどん上がるので怖いんです。でもご縁があって、直火焙煎で、 甘みのある深煎りのコーヒーがいただける「G P COFFEE ROASTER」の実豪介さんに相談させてもらうことに。試行錯誤をたくさん繰り返して、やっと深煎りも安定したレシピを見つけることができました」

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それぞれが自信を持ってコーヒーと向き合えるように

「LATTEST」は、その後、店舗を多角的に展開することになる。コーヒーと自転車というコンセプトで、2016年には目黒山手通りに「bike MEGURO」、2018年には京都三条商店街に「bike KYOTOSANJO」をオープン。続いて、コーヒーと美容室というコンセプトで2019年、京都に「hair&makes」もオープンした。

2020年には、美味しい食パンを提供するLAPANとのコラボレーションで「LATTEST EBINA」を、さらにボルダリングやオーストラリアのビーチの白砂を使った大きな砂場と自転車屋を併設する「LATTEST MIZUMACHI & SPORTS」をオープン。

2019年にマネージャーとなった宗広は、「LATTEST」のスタッフ育成のほか、これらの店舗開発にも携わることに。

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「フードのメニュー開発はとても苦労しましたが、コーヒーを見る視点が広くなったように感じています。

私は本来、トップで仕切るようなタイプではないんです。どちらかというと陰で支えるのが好きなタイプ。ある時、みんなを引っ張っていくことだけがマネージャーの役割ではないと気づきました。各種大会で上位入賞を目指すスタッフもいれば、コーヒーのことをもっと知りたいというスタッフもいる。そんなふうに、スタッフそれぞれが持っている目標に向かうのをみんなで支え合って、自信を持ってコーヒーに向き合っている、そんなチームにしていけたらいいなと思っています。

女性のよさって、マルチタスクが得意なことかなと思っていて。アンテナをいっぱい張って、細やかにいろんなことに気づくことができる。そうした女性ならではの感性は、今でも『LATTEST』の一番の強みですね」

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宗広は、「LATTEST」をどんな店舗へと成長させていきたいのだろうか。こんなふうに答えてくれた。

「女性がより長く働ける環境をつくれたら、と思うんです。女性にはどうしても、結婚や出産といったライフステージの変化で、自分以外のことを優先しなければいけない期間がありますよね。そうしたライフステージの変化から、辞めてしまったスタッフがたくさんいます。でも、そういった人生の変化をスタッフみんなで見守って、子育てをしながらも、いつでもお店に戻ってくることができる。そんな安心感をスタッフに持ってもらうために、自分自身も道を切り開いていけたらと思っています」

文:増村 江利子
写真:Kenichi Aikawa

MY FAVORITE COFFEE人生を豊かにする「私の一杯」

「ラテスト」は、私をコーヒー業界へと導いてくれた一杯です。もともと苦味がしっかりと感じられるコーヒーが好きなのですが、コーヒーを知れば知るほど、苦味や酸味の中にも、さまざまな美味しさがあるという奥深さを学びました。

朝、出勤すると必ずエスプレッソとアメリカーノとラテの味をチェックするんですが、出勤後の一杯として、よく「ラテスト」をつくって、できたての味をいただいています。私は3口くらいで、ぐいっと飲んじゃうんです。とてもやみつきになるメニューですよ。

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