Kiss the Hippo Coffee キス ザ ヒッポ コーヒー / Joshua Tarlo

Kiss the Hippo Coffee

キス ザ ヒッポ コーヒー / Joshua Tarlo

当事者として気候変動に向き合う。同じ信念を胸に未来を変える

イギリスのコーヒーロースターKiss the Hippo Coffee

2018年にロンドンのリッチモンドで創業したKiss the Hippo Coffeeは、第三者機関から業界で初めてカーボンネガティブカンパニーの認証を与えられたコーヒー会社である。「よりサステナブルで、公正なコーヒー業界の実現」を目標に掲げる同社でコーヒー部門を運営管理しているのが、業界歴約20年のジュショア・ターロだ。イギリスバリスタチャンピオンシップの優勝経験もある彼に話をうかがった。

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カーボンニュートラルではなく、カーボンネガティブ

カバに口づけを――。聞いただけではピンとこないキスザヒッポという社名には、環境に配慮したコーヒー会社をつくりたいという創業者の志が秘められている。

「自然に対する敬愛の心を遊びのある形で表現したようです。自然の象徴としてカバをアイコンにしていますが、こちらが何も語らずにその意図を理解してくれる人は誰もいません。でもだからこそ、お客さんに説明することも多く、会話のきっかけになっているんです」

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キスザヒッポは現在、ネパールでカーボン・オフセットを目的とした植林活動を行っている。商品やパッケージ、運送過程におけるカーボンフットプリントを算出してきたことが評価され、2021年にはスイスのNPO団体「On A Mission」からカーボンネガティブ認証を与えられた。

「サステナビリティは、私たちキスザヒッポの核を成す精神であり願望です。私たちが今、こういう世界に生きている以上、明らかに取り組まなければならない重要な課題です。 

なぜ他社が同じようなことをしないのかわかりません。気候変動という危機に直面している今、コーヒーが栽培されている赤道付近の多くの地域では今後50年〜100年で人が住めなくなってしまうと言われています。コーヒーがある未来を作りたいと思うのなら、根本的にビジネスのやり方や生き方を変える必要があるのです。

コーヒーに限らず、できるだけ多くの分野でサステナビリティを念頭に置いておくことが、未来に対する私たちの責任です。今、この世に存在するすべての企業がサステナビリティに取り組むべきだと思います。

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多くの人が難しいと勘違いしていますが、イギリスにおいて、100%再生可能エネルギーに切り替えることは比較的簡単です。リサイクル可能なパッケージ素材を購入することも、運送をカーボンオフセットすることも簡単です。しかも、時を経るごとにハードルは下がってきています。

私たちが大切にしているのは、カーボンニュートラルではなく、カーボンネガティブを達成することです。これまで化石燃料の恩恵を受けてこなかった国や地域が、人々の生活水準を向上させ、経済的な安定と発展を手に入れる。そのために、化石燃料の恩恵を大いに受けてきたイギリスのような国がカーボンネガティブに取り組むべきだと思います。

とはいえ、今はまだ、人々がカーボンネガティブにつながる習慣を生活のなかに取り入れたくても、その選択肢を得られにくいという課題があります。だから、人々がより簡単にそういうコーヒーにアクセスできる状況をつくることを私たちは目指しています」

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ワクワクを生むことが私たちの仕事

むろん、情熱だけではその理念やビジョンを実現することはできない。キスザヒッポにはジョシュア以外にもイギリスバリスタチャンピオンシップの優勝経験者がいるうえに、近2年のバリスタチャンピオンは、キスザヒッポのコーヒーを使用して優勝した実績もある。理念と品質を両立させているからこそ、彼らは人々の支持を得ているのだろう。

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 「今、おいしいコーヒーは巷に溢れています。私が初めてイギリスに来た2014年頃、ロンドンの端から車で5時間くらいかかるコーンウォールでもそこら中においしいコーヒーがありました。この国ではどんな田舎でもいいコーヒーが手に入ります。

現にイギリスでは、40年ぶりにレギュラーコーヒーがインスタントコーヒーの消費量を上回りました。スペシャルティコーヒー業界の規模も過去最大になっています。それに連なるように、バリスタも技術が向上し、カフェの質もよくなっていますよね。

また、コーヒー生産者も自身のルーツや個性を活かせるようになり、ファンを持つ生産者も現れ始めています。コーヒーが単なるコモディティから脱却しやすくなっている傾向は、ポジティブですばらしいと思います」

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もっとも、進歩に淘汰はつきものである。ロースター間の競争も激しくなっていくにつれ、各ロースターが個性を明確化することが求められるようになっている。

「私たちが目指しているのは、ワクワクするようなユニークなコーヒーを常に提供することです。親しみやすいコーヒーも販売していますが、それは多くのロースターがやっていることですから。

人は、刺激的でユニークなコーヒーを飲むと、記憶をたどり、これまで味わってきたフルーツなどでその味を表現します。記憶とつながるのと同時に、その経験を他の人に話したい、共有したいという思いが沸き起こるのです。大人になっても初めての味わいを体験できることは、とても貴重だと思います。『おいしい』の概念を押し広げてくれるユニークなコーヒーは、人とつながるとてもいいきっかけになるのです。

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生豆を調達するうえでもっとも重要視しているのが、できる限りテイスティングをすることです。私たちは毎年、何千種類ものコーヒーをテイスティングしますが、より多くのコーヒーに触れることで、より多くの発見がありますし、ユニークなコーヒーのありがたみをより強く実感できるのです。

焙煎チームでは、コーヒー豆の個性にフォーカスし、どこが個性的で、なぜそのコーヒーには飲む価値があるのかを捉えて、お客さんに伝えることを目標にしています。私たちは協力しながら焙煎のプロファイルを作り込んでいくのですが、交わす意見が多いほど、より多くの人が共感できるコーヒーを作れると考えています」

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キスザヒッポが耳を傾ける相手は、社内のメンバーにとどまらない。カスタマーサポート部門を通じて、できる限り顧客との接点を持つことで、彼らの興味の対象を知り、商品開発に反映しているという。

「毎週のように、楽しんでいるコーヒーや抽出方法について、私が個人的に意見交換をしているお客さんもいますが、おいしいコーヒーを作るためのコラボレーターとしてお客さんと関わることが理想です。

私たちが作りたいのは、キスザヒッポらしいコーヒーではありません。ワクワクするコーヒーと出会えば、バリスタも自然とそのコーヒーを共有したくなるでしょうし、それを飲んだお客さんも誰かに共有したくなるでしょう。ワクワクは、人から人へと伝播していくものです。実際、お客さんからメールをいただくコーヒー、お客さんが友達に紹介してくれるコーヒーは、尖ったものが多いですから」

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“器の大きい”コーヒーの世界

ジョシュアが15歳の頃にコーヒー店で働き始めて以来、20年近くが経つ。その間、大学で都市開発と国際関係を学んだりしたものの、コーヒーとは縁が切れたことがないという。

「もともとは、コミュニティの中心的な役割を果たしているという理由でカフェがとても好きでした。それ以来、コーヒーに関心を持ち続けられたのは、コーヒーがとても興味深い“媒体”だからです。

食品科学から貿易、農業、カフェの運営、HR、マーケティングまで、コーヒーにはありとあらゆる分野で関わることができます。私自身もカフェから始まり、焙煎や生豆の調達を経て、今はロースターの運営管理の仕事をしていますが、そんな“器の大きさ”こそコーヒーの魅力でしょう」

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前職のコーヒー会社で、ジョシュアは生豆の仕入れ担当として、一年中、海外出張をしていた。生産者と直接触れ合える喜びは大きく、人生は充実していたものの、4年ほどそのような生活が続いたあるとき、1年の半分はホテルで寝ていることにふと気づいたという。

そんな生活から少し離れて、私生活も充実させたい。そう考えていたジョシュアに『うちで働かないか』と声をかけたのが、キスザヒッポのオーナーだった。

「入社を決めたのは、ビジネスという枠組みのなかで、サステナビリティの実現に力を注ぎ込む姿勢がかっこいいと感じたからです。それから3年近く経ちましたが、キスザヒッポでは皆、共通認識のもとで同じような信念を共有しながら仕事に取り組んでいます。それが、組織としての強さにつながっているでしょうね」

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強い当事者意識を持つジョシュアにとって、キスザヒッポは課題解決にもっとも近づける格好の“器”なのだろう。

「私が生まれ育ったカナダに比べて自然が少ないイギリスでは、日常で自然を目にする機会がほとんどありません。だからこそ、もっと環境に配慮しなければという責任感が生まれますし、自然がなくなった世界がどのようなものになるのか、いずれ直面する現実として向き合わざるを得ません。どこもかしこも都市化が進んでいるこの国で暮らしていると、持続可能ではない現状を身にしみて感じ、危機感が強まるのです」

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現在、キスザヒッポではダイレクトトレードにより、フェアトレードの少なくとも2倍以上の価格で生産者からコーヒーを購入する「よりフェアなトレード」を実践している。それでもなお、ここから20年はコーヒー生産者にとって厳しい時代になる、とジョシュアは警鐘を鳴らす。

「大事なのは彼らにとってより公正なシステムを構築することです。気候変動の危機を乗り越えたその先の世界でも、コーヒーが存在できるようにすることです。彼らが矢面に立たされるべきではありません。みんなで痛みを分かち合って、解決策を探っていかなければならないのです」

MY FAVORITE COFFEE人生を豊かにする「私の一杯」

一番おいしいのは農園で生産者と一緒に味わうコーヒーですが、日常で言えば、朝、家でゆっくりと時間をかけて飲むコーヒーがとても好きです。私の家はいつも、友人のロースターのコーヒーで溢れていますが、おいしさだけでなく、彼らの仕事ぶりを体感できるのはすばらしいこと。世の中にたくさんロースターがある幸せを実感します。

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