Keen Coffee ボネ・ポストマ

Keen Coffee

ボネ・ポストマ

学ぶ姿勢は永遠に。“終わりなき旅”を続けるロースターのコーヒー愛

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2016年、2人のバリスタが「コーヒーをkeen=熱心に学ぶ」という思いをこめて創業した「Keen Coffee」。創業者のボネさんが「私たちは単なるロースターではない」と語るところに、Keen Coffeeのこだわりは垣間見える。10数年来、スペシャルティコーヒーの世界で探求の旅を続けてきたボネさんに話をうかがった。

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ようこそ、スペシャルティコーヒーの世界へ

コスタリカの「エルディアマンテのナチュラルアナエロビック」とブラジルの「ジャグアラ農園」。オンラインストアでその2種類を並べて売っているところに、キーンコーヒーのスタンスは表れている。なお、キーンコーヒーが焙煎した「エルディアマンテ」は、「ワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)2018」3位のバリスタが大会時に使用したコーヒー豆でもある。

「それなりに経験のあるバリスタであれば、ブラジルのジャグアラには目もくれないでしょう。でも、カプチーノやエスプレッソとも相性が合うジャグアラは人気商品。スペシャルティコーヒーに馴染みのない人たちから支持されています。一方、そういう人たちはエルディアマンテがなぜこんなに高価なのか、理解しがたいと思います。つまり、私たちは、スペシャルティコーヒーのプロからビギナーまで、幅広い層をターゲットにしているのです」

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飲食店向けの卸が事業の中心だったキーンコーヒーが、半ば必要に迫られるかたちでオンラインストアでの販売を強化したのはコロナ禍がきっかけだ。なかでもヒットしているのが、数種類のコーヒーを楽しめる「テイスティングセット」だという。

「人々は味や香りの違いに興味をそそられているのでしょう。コーヒーごとの違いに気づくことでコーヒーの扉は開かれます。コロナ禍がそういうきっかけを提供してくれたという意味では、コロナ前の世界には戻りたくないという気持ちも私の中にはあるんです」

だが、そこに損得勘定はない。「熱心に」を意味する社名が、「私たちは単に、焙煎した豆を販売するだけのロースターではない」というボネの発言を裏付けている。

「研鑽を積むこと。人々を教育すること。コーヒー生産者の声を人々に伝えること。これらはキーンコーヒーのDNAとも言える、私たちの大切なアイデンティティなのです」

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冒険に満ちた、スペシャルティコーヒーの世界

キーンコーヒーの共同創業者であるボネとロブがバリスタになったのは、ともに2008年頃のこと。今ではコーヒーの世界にどっぷり浸かっているボネだが、カフェでバリスタの仕事を始めたのは「世界を旅するためにお金を稼ぎたかった(笑)」からだという。

「ただ接客するだけの仕事かと思いきや、とても熱意のある人たちが集まる店だったので、閉店日である火曜日にも出勤し、バリスタの研修を受けなければなりませんでした。仕事だから仕方ないか、という義務感めいた気持ちが消え、前向きに参加するようになったのはいつからだったでしょう。ラテアートのパイオニア的存在だったそのカフェで、他の店ではできないことをするのが楽しくなったんです。バリスタとして、お客さんにおいしいコーヒーを飲んでもらうだけでなく、コーヒーについて詳しい話をしたり、感想を聞いたりする関わりも大好きでした」

ワークショップや研修に参加し、スペシャルティコーヒーの世界や業界の仕組みなどを学んだことが、ボネの生き方を大きく変えていく。自分が得た知識を伝えたいと思うようになったボネはやがて、自身でもそういったイベントを主催し、学びの場を創り始めた。

「スペシャルティコーヒーについて調べたり、いろんな種類のコーヒーを淹れて、飲んでみたりするなかで、次々と新しい発見がありました。(共同創業者の)ロブが時々言っていたのですが、『スペシャルティコーヒーの世界は、インディ・ジョーンズのような冒険に満ちている』んです」

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そこで興味を深めたことが、後のワールドブリュワーズカップ(WBrC)出場にもつながってゆく。

「基本的なコーヒーに関する知識やスキルもこの大会を通して学びましたし、新しい方法を試し、イノベーションを生むためのヒントも得られました。さらに世界のコーヒーコミュニティーとつながることもできた。この大会を通して得た多くの出会いがなければ、キーンコーヒーは生まれなかったでしょう」

コーヒーの世界にすっかり魅入られたボネは、いつからかバリスタだけでは満足できなくなっていた。

「バリスタはどうしても、ロースターが提供する豆のクオリティに依存してしまいます。もともと生産者と消費者の中間にいて、重要度の高いロースターというポジションに興味がありましたしね」

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こうしてボネはロブとともに、コーヒーを自家焙煎する「Keen Coffee」を創業。バリスタ時代にバーやレストランとのネットワークを築き、バーの経営や質の高いコーヒーの淹れ方を経験的に学んでいたふたりにとって、ロースターとしてやっていくことにそれほど苦労はなかったという。

「品質を追求して生産されたコーヒー豆のポテンシャルを最大限引き出すことが、私たちの仕事です。常々疑問を感じているのは、時にロースターにスポットライトが当たること。私たちは、焙煎によって新しいフレーバーを加える(新しいものを生み出す)ことはできないからです。その意味でも、コーヒーの流通において、いちばん重要なパートを担うのは生産者だと私は思っています」

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サステナブルな関係を求めて

コーヒーについて熱心に学び、生産地を何度も訪れてきたからこそ、ボネは生産者を尊重する精神を忘れない。

「オランダで友人の家に行くと真っ先に『コーヒーでも飲む?』と訊かれます。人々の家にはコーヒーが常備されていますが、これは当たり前のようで、実はとても贅沢なこと。生産者が種を植えるところからコーヒーを飲めるようになるまでには、大変な労力がかかっているからです。

スペシャルティコーヒーの使命は、その分野に詳しい人間がコーヒーの種類やフレーバー、焙煎方法といった多様性を人々に伝えていくことだと思います。人々がこれらの情報を得て、味を知れば、生産者に感謝の気持ちを抱き、そこに価値を見出すでしょうから」

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世界のコーヒー生産者の多くは、経済的に豊かとは言えない暮らしを送っている。だがボネはこれまで、生産者から「プレミア価格や高額な値段でコーヒー豆を買ってほしい」という要望を聞いたことがない。

「『来年、また来てほしい』『来年も引き続き私たちから買ってほしい』と彼らは言います。その通りですよね。私たちにも言えることですが、ビジネスを安定させるために鍵を握るのは、継続的な取引関係を確保できるかどうかですから。

ただ、スペシャルティコーヒーの世界には、最高品質のコーヒー豆だけを手に入れようとする人たちがいます。彼らの目的は最高品質の豆だけなので、それ以外の高品質な豆には目を向けません。また、人々がスペシャルティコーヒーに新しいものや新しいフレーバーばかり求めることも、農家にとっては大きなプレッシャーになります。

だからこそ、学びが大切なのです。スペシャルティコーヒーについて知ることで、別の選択肢が生まれるはず。正当な対価が生産者に支払われることでサステナブルな関係性を実現できれば、生産者たちは貧困から抜け出すチャンスを手に入れられるのです」

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教えることは、学ぶことでもある

バリスタからロースターへ。コーヒーを探求する旅を続けてきたボネは今、「焙煎から抽出まで、自分たちで手がける」という理想を叶えるため、さまざまな種類のコーヒーを味わえる「エスプレッソ・バー」を開く構想を練っている。

「店を訪れた人と一緒に新しいひとときをつくりだせる“魔法”のようなものが、バーにはあると思うんです。バーというリアル店舗では、お客さんの感想を聞くことができるし、たとえ感想を言わなかったとしても、反応や目を見ればわかることもある。こうした生身のやりとりから人とのつながりが生まれ、物語が始まるところが私は大好きなんです」

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ボネが講師としてワークショップや研修を開催し続けているのも、そこに生身の人間どうしの関わりがあるからだ。かつて、参加者の質問に対して「わからない」と答えたり、知ったかぶりをしたりしてその場をしのいだ”失敗”もボネの“財産”になっている。

「『私は答えを知らないので、一緒に考えましょう』と正直に伝えることが最善だとあるとき気づきました。次々と新しい農家が現れ、新しい精製プロセスが生まれるスペシャルティコーヒーの世界では、学び尽くしたと感じることはありません。だからこそ、私(たち)は “学生”であり続けたい。私にとって教えることがとても楽しいのは、教えることを通して、自分もまた多くのことを学べるからなんです」

「コーヒーを探求する私たちの旅には終わりがない」と、目を輝かせながらボネは言う。彼の生き方から滲み出るコーヒー愛が、これからも人々の心に火を灯していくのだろう。

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MY FAVORITE COFFEE人生を豊かにする「私の一杯」

「自分はやっぱり、コーヒーが好きなんだ」と再認識させてくれる新しいコーヒーです。私のこれまでのコーヒー人生のなかで、一口飲んで「だから私はこの仕事が好きなんだ」と思えた瞬間がこれまで何度かあるんです。その感覚が、コーヒー自体の味によるものなのか、その環境や状況によるものなのかはわかりませんが、それぞれまったく別の形で訪れています。

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