Coffee Quest Brasil

Coffee Quest Brasilコーヒー クエスト ブラジル

コーヒー生産者に『声』を与える

コーヒークエストは、オランダ、アメリカ、ブラジル、コロンビアに拠点を持つコーヒーカンパニーである。オランダ、アメリカではセールスを、ブラジル、コロンビアではクオリティコントロールと輸出を行っている。

私たちはオランダで代表のフリソと顔見知りになったことをきっかけに、アジアに彼らのコーヒーを紹介する機会を得た。今年9月にコーヒークエストコロンビアのニュークロップを日本でオファーし、好評を博したのは記憶に新しい。

さらに、ブラジルのオファーのためにこの夏彼らと一緒に現地を訪問する予定だったが、スケジュールの関係で叶わず、現地でのプリセレクションはフリソに一任することにした。ブラジルの生産者は、おおよそ8月中にコーヒーの収穫を終える。しかしながら、9月になってもなかなかサンプルが上がってこない。その原因は “霜害” だった。

ブラジルはこの夏異例の寒波に見舞われ、深刻な霜害が発生した。コーヒー生産への影響は免れず、生産量の約20%が犠牲になり、コーヒー市場の取引価格は歴史的な高値にまで跳ね上がった。ほとんどのスペシャルティコーヒーは収穫済みで、収穫量にはそれほど影響はなかったが、コマーシャルコーヒーへの被害は甚大だったという。また、この霜害によって多くのコーヒーの木が失われ、来年以降の収穫量の激減が懸念されている。TYPICAの事業を始めてから、ほとんどの生産地が多かれ少なかれこのような異常気象や気候変動の影響を受けていることに気付かされた。

そんな混乱を乗り越えて、彼らはブラジルからサンプルを届けてくれた。このサンプルは生産者にとって、そしてコーヒークエストにとって、いつもより重みがあるものだろう。私達の役割は、彼らのコーヒーを物語とともに丁寧にロースターに手渡すことだ。

ブラジルに渡航中のフリソ、そしてブラジル現地で活動するガブリエルとテレサにオンラインで話を聞いた。

コーヒークエストブラジルのなりたち

コーヒークエストはオランダを拠点とするフリソとミシェル、コロンビアを拠点とするロナルドがアムステルダムコーヒーフェスティバルで偶然出会い、意気投合したことがきっかけで始まった。さらに、アトランタで開催されたSCA(Specialty Coffee Association)の展示会でミシェルがブラジルを拠点とするガブリエルと出会い、その出会いがコーヒークエストブラジルの設立まで発展した。

ガブリエルはコーヒー生産者の三代目である。一族で三十年以上ブラジルのコーヒービジネスに携わっており、生産者のことを熟知している。彼らのもとには毎年数多くのサンプルがブラジル各地から届くという。コーヒークエストブラジルの中枢を担うのは、そのガブリエルとパートナーであるテレサの二人だ。

「この世界に入ったのは、ガブリエルとの『愛』があったからですね(笑)ガブリエルとは大学で出会い、付き合うようになりました。彼は大学を卒業した後、実家のコーヒー会社で働くためにバルジニャ(ミナスジェライス州南西部の街、コーヒー生産の中心地)に戻ったので、私は長期休みのたびにこの街を訪れるようになりました。ある年末年始の休みに、バルジニャでSCAの理事長と出会い、『働いてくれる人を探している』と聞きました。そのときちょうど私も仕事を探しているタイミングだったので、本格的にバルジニャに移ることを決めました。SCAで働き始めて、カッピングや認証、焙煎からコーヒービジネスまで、コーヒーに関する学びを深めることができました。今もコーヒークエストと並行してSCAでも働いています」(テレサ)

フリソは二人との出会いをこう語る。

「ガブリエルと一緒に事業をしようという話になったのは、私が二回目にブラジルを訪れたときのことです。ブラジルには膨大な数の生産者がいるので、高品質なスペシャルティコーヒーを探すには、時間をかけてたくさんのコーヒーを試し、生産の背景や要因を深く理解する必要があります。その点、様々なエリアのコーヒーを集約し、クオリティを判断できるガブリエルとテレサのおかげで、ブラジルでの可能性は大きく広がりました。それから二年経った今、私たちは生産者と良好なネットワークを築いています。それは、ガブリエルとテレサが、オフシーズンにも様々な生産地を訪れ、生産者とコミュニケーションを取ってくれているおかげです。仕事を前に進めるためには、チームとそのマインドセットが不可欠。ガブリエルとテレサという相性のいいメンバーとの出会いこそが、コーヒークエストブラジルの始まりでした」(フリソ)

コーヒークエストはその名の通り、道中で仲間を増やしながら突き進む冒険のような事業だ。フリソはいつもエネルギーに満ち溢れていて、その光に仲間が集まり冒険は続いていく。

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コーヒー生産者に『声』を与える

最高のチームと言えるコーヒークエストブラジルの三人は、どんなビジョンを共有しているのだろうか。

「私たちはコーヒー生産者に『声』を与えたいと思っています。多くの小規模生産者は、自力で海外のマーケットにリーチすることはできません。素晴らしいコーヒーを作ったとしても出口がないので、ローカルのマーケットにコマーシャルコーヒーとして売ってしまうのです。コーヒーの美味しさは、飲めばすぐにわかります。でも生産者の物語は、誰かが語らなければ伝わらない。私たちは一杯のコーヒーにまつわる生産者の物語を拾い集めて、それを海外に発信したいと考えています」(ガブリエル)

コーヒー生産地の中心で生きてきたガブリエルの心身には、生産者の物語が染み込んでいる。それを伝えられるのは、彼しかいない。

「私たちと生産者の関係性は、コーヒーに関することだけに留まりません。私たちは、彼らとパートナーシップを築きたいと思っています。フリソが私たちと築いてくれたような関係、つまりは友人関係の先にビジネスがあるのです。スペシャルティコーヒーと言いますが、スペシャルなのはコーヒーだけではありません。コーヒーの向こう側にいる人たちもまたスペシャルな存在なのです」(テレサ)

「ラベルに生産者の名前を記すだけでは何の価値もありません。大切なのは文脈です。その人に光を当て、その人の物語を語ることで、名前に意味を持たせなければならないのです」(フリソ)

物語をコーヒーに乗せて伝えることで「関係性」が生まれる。それこそがスペシャルティコーヒーの真髄だということを、三人は心の底から共有しているようだ。 

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ブラジルの未来

コーヒーの生産量において長年世界一を独走してきたブラジルだが、その大半を占めるのは、生産量を増やすために合理化、効率化を追求した大規模農園が生産するコモディティコーヒーだった。しかし、その様相も変化しつつある。

「ブラジルで高品質なスペシャルティコーヒーを見つけるのは、十年前は本当に難しいことでした。でも、時代は変わりつつあります。今のブラジルには、コモディティコーヒーからスペシャルティコーヒーに乗り換える若手生産者がたくさんいる。彼らはコーヒーの質を高めるために手間をかけることの重要性を理解しています。

スペシャルティコーヒーの需要は世界的に伸び続けていて、供給が追いつかなくなることが懸念されています。ブラジルはここで大きな役割を果たすでしょう。例えば、中米の山岳地帯の農園ではコーヒーは手積みになるので、生産量を増やすには人件費などのコストがかかり、大量生産には向いていません。一方、ブラジルは農地が平坦なこともあり機械化が容易です。さらに、ブラジルの生産者は成長意欲が高く、効率化や情報収集が得意で、そのイノベーティブなマインドセットをスペシャルティコーヒーの生産に応用し始めています。ブラジルで高品質なコーヒーを大量生産することも夢ではありません」(フリソ)

美味しいコーヒーのサステナビリティを高めるという目的に対して、テクノロジーを活用して大量生産を目指すというのも、プラクティカルな問題解決になり得るだろう。

「透明性・協力・クオリティ」

そんな時代の転換期に居合わせたコーヒークエストブラジルの三人は、これからどんなゴールを目指すのか。

「私たちのゴールは、ロースターと生産者の新しい関わり方をデザインすること。ロースターには毎年同じ生産者から同じプロファイルのコーヒーが手に入ることを約束し、生産者には毎年必ず適正価格で売ることができる状況を保証する。そんな仕組みをつくることで、長期的な関係性を築きたいのです。そのためには、完全な透明性を確保し、クオリティを最重要視する姿勢が欠かせません」(ガブリエル)

コーヒークエストのWebサイトには「透明性・協力・クオリティ」という言葉が掲げられている。たとえスペシャルティコーヒーの領域において大量生産が求められるようになっても、この三つを大切にする彼らの姿勢は変わらないだろう。この価値観は、きっとブラジルというコーヒー生産国の宝になるはずだ。ブラジル新世代のトップランナーとして走り続けてほしい。

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