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2022.07.22

メキシコ / Mexico

メキシコという国

北部はアメリカ、南東部はグアテマラ、ベリーズと接する中米の国・メキシコ。総人口は約1億2900万人(2020年)で、スペイン語圏の国としては世界最多である。1993年にはAPEC(アジア太平洋経済協力)、1994年には「世界の先進国クラブ」とも称されるOECD(経済協力開発機構)に加盟し、G20にも名を連ねている。

1990年代以降、自由主義経済政策を推進し、急速なグローバル化を遂げてきたメキシコのシンボルが、首都・メキシコシティだ。多国籍企業のオフィスが入居する高層ビルやホテルが林立している他、大型ショッピングモール等も多数存在するなど、世界有数の都市として知られている。しかし、国の経済成長を牽引してきた一方で、都市部への一極集中、人口過密といった問題も孕んでおり、激しい貧富の差を生み出すひとつの要因となっている。

事実、所得格差を示すジニ係数は0.42(2018年)とOECD諸国内で4番目に高く、南北の地域間格差や人種や民族間の格差も顕著である。メキシコの民族構成(2012年)は、メスティーソ(スペイン系等の欧州系と先住民の混血)が 62%、先住民が 31%、白人などその他が 7%程度となっている。

さらにメキシコでは階層が世代間継承されやすい傾向が強く、世界経済フォーラム(WEF)の調査によると、メキシコの社会的流動性は世界82カ国中58位。ブラジルやコロンビアと同程度の水準にとどまっている。「裕福な高身長の白人と、貧乏な低身長の褐色人種というステレオタイプは、市民生活の隅々まで浸透しており、テレビや映画などのフィクションの世界でもそれが崩れることはない」という現地住民の声もある。

この状況を改善すべく、2018年には貧困対策を公約に掲げた“庶民派”の大統領が就任。教育を通した機会の平等を実現すべく、若者向け奨学金の拡充を図るなど、「自助努力によって階層を上昇移動させられる」仕組みづくりを進めている。

また、世界13位の面積を持つメキシコは、石油を筆頭に、金、銀、銅など、豊富な資源を産出する世界有数の資源大国だ。それらは主要な外貨獲得源として国内経済を支えてきた。現政権は、「石油産業の活性化こそが経済成長の柱」だとし近年、業績がふるわない国営石油企業・ペメックスにテコ入れしているが、「環境対策が遅れている」という批判を受けるなど、SDGsやESGという世界の潮流に逆行している節もある。

その他、メキシコの特徴のひとつに掲げられるのが、女性の高い社会進出率であろう。列国議会同盟(IPU)によれば、2022年5月現在、女性国会議員比率は世界4位(下院50%、上院49.2%)。2000年代より女性の政治参画を実現すべく、候補者40%のクオーター制(2008年)やパリテ=男女同数(2014年)の義務化を推進してきた歴史がある。

その帰結として、2019年6月に実現した憲法改正は、歴史的な変革と言える。国から連邦、州、自治体レベルまで、すべての公的部門においてパリテの導入が義務づけられるようになったのだ。

その背景にあるのが、メキシコをはじめとしたラテンアメリカ社会に根強く残る「マチスモ」に象徴される男性優位主義だ。長年、女性に対する男性の暴力は深刻な社会問題となっており、19世紀末頃から活発に行われてきたフェミニズム運動の延長線上が今なのだ。

かつてはスペインの植民地だったメキシコは、ラテンアメリカ諸国の中でもユニークな文化を持っている。丸谷吉男によると、現代のメキシコ文化は『マヤ文化やアステカ文化の流れをくむ素朴で力強い一面と諦観的で孤独な一面をもつ土着の要素に、スペイン風の情熱的で享楽的な要素、カトリック的な要素が融合した独自の「混血の文化」を形成 ※1』しており、『国民性は明るく、人生は楽しむためにあるという考え方が一般的』だ。「太陽の国」と呼ばれるゆえんだろう。

貧富の差が激しいのみならず、「世界でもっとも治安の悪い国」のひとつに挙げられ、権力者の汚職が蔓延する。そんな現状の割に国民の幸福度が高いのは、家族や親戚、友人との絆が深く、多くの祭りや伝統行事を大切にしているからだろうか(世界幸福度ランキング:2019年度23位、2022年度46位)。決して生きやすい環境ではないからこそ、自分たちで生きやすくする。そんな逞しさが、明るい国民性のルーツにはあるのかもしれない。

【参考文献・資料】
国政で女性議員約5割を実現するメキシコに学ぶ女性の政治参画(上)(下)
・『現代メキシコを知るための70章【第2版】』(2019・明石書店)
メキシコ 貧困を明るく笑い飛ばす幸せな国
・※1:日本大百科全書(ニッポニカ)

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メキシコのコーヒー

メキシコのコーヒー生産は、南部のグアテマラと接する地域で盛んに行われており、チアパス、オアハカ、ベラクルス、プエブラの四つの州が主要な生産地である。現在メキシコでコーヒー生産を生業とする人は約50万人で、そのうち約70%を10ha以下の小規模農家が占め、協同組合として組織されていることが多い。

コーヒーは1700年代後半に植民地支配とともにメキシコにもたらされ、先住民のメキシコ人によって数多くの小規模農園が生まれた。1970年代に、INMECAFE(Instituto Mexicano del Cafe)と呼ばれるコーヒーの政府組織が設立され、その組織による経済的支援、技術的支援によってメキシコのコーヒー生産は拡大したが、1989年に大統領の政策によって閉じられることになった。1989年は国際コーヒー協定(ICA)が解体された年でもあり、大統領は国際コーヒー市場からの脱却を目指したのである。その結果、生産者への支援は止まり、コーヒーの価格は下落を続け、1999年から2003年にかけてメキシコにコーヒー危機が訪れた。

そんな中、生産者は協同組合を組織し始めた。そして、危うい国際価格への依存をなくすべく、オーガニック認証やフェアトレード認証を利用して自らのコーヒーの価値を高めるという道を選んだ。これがメキシコで認証コーヒーが多く生産される所以である。現在、世界のオーガニックコーヒーのおよそ60%はメキシコで生産されている。このコーヒーの歴史からもメキシコの逞しさが垣間見られる。

メキシコのコーヒーはボディが軽く、明るく温かい風味を持ち、ナッツ、ストーンフルーツ、キャラメルというようなフレーバープロファイルで表現される。近年は品種や精製方法が多様化しているため、これまでのメキシコのイメージを変えるようなロットも数多く生産されている。

メキシコはスペシャルティコーヒーの生産国としてはまだ発展途上である。これからメキシコからどんなコーヒーが生み出されるか、世界中が期待している。

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