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2022.07.16

インド / India

インドという国

一国で、ロシアを除くヨーロッパ全土に匹敵するほどの広さを誇るインド。人口は13億8,000万人(2020年度)と、20年前の約1.3倍に膨れ上がっており、なかでも就業人口はそれを上回るペースで増加中だ。遅かれ早かれ、中国を抜いて世界最大の人口大国になると予想されている。

そのうち農村部で暮らす人口は約9億人(2020年)。毎年増加の一途を辿っているが、全体に占める割合は65%と年を追うごとに減少する一方だ。その要因は、都市部への人口流出や国全体での急速な人口増にある。それでも、農業に従事する就業人口の割合は約60%を占めており、インドの発展には欠かせない重要な産業となっている。

近年の目覚ましいインドの発展を語るうえで抜きにできないターニングポイントが、1991年に打ち出された経済自由化政策だ。価格統制を敷くなど、社会主義型計画経済の色合いが濃かった市場に競争原理を持ち込んだことで、積極的に外資が導入されるようになったのだ。以後、30年間でGDPは約10倍に伸びており、当時、先端的な高等教育が導入されたことが、インドを「IT大国」に押し上げた要因のひとつになっている。

一方で、急速な経済発展の代償として起きているのが深刻な交通渋滞と環境汚染だ。特にインドの大都市では、交通渋滞による経済損失や、大気汚染、騒音等の公害による健康被害が重大な問題となっている。2019年には、首相が「首都・デリーで大気汚染が耐えられない水準まで達した」と警告し、市民に外出の自粛を要請するとともに、車両の通行制限に乗り出した。

また、国内の貧困問題は深刻で、都市部居住者のうち35%(2018年)がスラムで暮らしている。さらに五歳未満児死亡率(出生千対)が世界平均の37に対して32.6、妊産婦死亡率(出生10万対)が世界平均の211に対して145 (2017年)と、依然として厳しい数値を示しているが、長期的に見ると、公衆衛生や保健医療の水準が高まったことで状況は着実に改善している。

その他、インドを特徴づけるのが、ヨーガに代表される「精神性を追求する文化」であろう。元東洋大学教授の宮本久義によると、ヨーガは「元々、肉体の訓練と精神の修練が固く結びついた宗教的救済技術であり、解脱や宗教的至福を目的とする」ものであった。

インド南東部にある世界最大級のエコビレッジ・オーロヴィルには、そんなインドの精神や文化が息づいている。1968年に発足し、5万人の住人が暮らすコミュニティを目指したこの“実験都市”の理想は、「世界中の人々が、民族、国籍、思想信条を超えて調和すること」だ。現在生活しているのは60ヶ国から集まった3300人。「金銭のやりとりをできる限りなくす」ために、住人が各々の職能を価値として他者に提供し合う“贈与経済”の仕組みが導入されている。

参考:
・The World Bank
・SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2022
・『ヒンドゥー教の事典』(2005)東京堂出版
https://auroville.org/page/vision-of-the-city
・『現代インドを知るための50章』(2007)明石書店

インドとコーヒー

インドのコーヒー生産には長い歴史がある。コーヒーの起源を紐解くと、その冒頭にインドの聖人ババ・ブーダンが登場する。彼はメッカ巡礼の際に訪れたイエメンのモカ港からインドまでコーヒーを持ち帰り、栽培を始めた。その後、コーヒーはインドネシアやオランダに渡り、世界中に伝播したという伝説がある。

1800年代からはじまったイギリス統治時代からヨーロッパへのコーヒーの輸出が強化されたため、コーヒー生産は繁栄した。1940年代、第二次世界大戦の影響によってコーヒー産業が壊滅的な状態になったことを受け、インドにコーヒー委員会(Coffee Board of India)が設立された。そこでは研究開発や技術支援が行われ、コーヒー産業の基盤が固められた。

さらに、1996年に国の規制が緩和され、生産者が自由にコーヒーを輸出できるようになり、コーヒーの流通は活性化した。さらに、インド国内の経済発展によって国内消費量が伸び、国産のコーヒーに対するニーズも高まっている。

インドのコーヒーは、これまで主にヨーロッパのマーケットでエスプレッソ用として流通していた。「モンスーンマラバール」と呼ばれるインド特有の精製方法は、生豆を港の倉庫で貿易風に晒して数ヶ月かけて乾燥させることによってボディを増し、酸味を弱くすることによって、エスプレッソに適したコーヒーに変化させるというものである。

近年はコーヒー本来のフルーティーな風味を楽しむスペシャルティコーヒーの生産が積極的に行われており、エステイト(自社農園)や自国のコーヒーを焙煎するロースターも増えている。

インドでは、S795やSelection 9などインドのコーヒー研究所で開発されたハイブリッド品種、そしてティピカやケントも多く栽培されている。特にS795はさび病に耐性があるアラビカ種として有名で、インドネシアでもよく見られる。全体的な印象として、ブラウンシュガー、アップル、マンゴーなどラウンドな味わいを感じるが、これからより多様なコーヒーが生産されることが期待されている。

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