Nicaragua 2020

*この記録は2月に中米へ渡航した時に記した文章である。新型コロナウィルス以降、世界の見え方がまったく変わってしまったことに驚く。

ニカラグアからグアテマラへ移動する飛行機でこれを書いている。一時間ほどのフライト。眼下には隆起した大地や名もない湖が見える。まだまだ目に映していない風景、出会っていない人々が無限に存在することに、とてつもない自由さを感じる。

2018年の政治闘争によってさらに危険なイメージが強まったニカラグアだが(実際何人もの人に「ニカラグアは近年危険みたいだけど大丈夫?」と心配された)、実際に身を置いてみると、穏やかで、どこか日本に似た印象の国だった。

どこか、というかかなり、と言った方が近いかもしれない。首都マナグアからコーヒー生産地にほど近いオコタルまで車で移動したのだが、まるで日本の田舎のように田んぼが延々と続き、時々郊外型の街が現れる。ガソリンスタンド、ちょっとした飲食店。田舎の方まで来ると鄙びた温泉街のような風情があり、山に入ると松の森に囲まれ、大小の石が転がった清流が流れている。すれ違うのはトヨタなどの日本車ばかり。「ここって北陸かどっかだっけ?」と、少し倒錯した感覚を覚えた。人の感じは温かく控えめで、多くの人は英語を話さず、それも日本のよう。観光客は少なく(特にオコタルは、世界的なコーヒー名産地ではあるが、観光資源があまりない。欧米のバックパッカーを一組しか見なかった。アジア人には会わなかった)、のんびりとした雰囲気だった。ニカラグアの滞在は、エキサイティングな冒険というより、田舎のおじいちゃんの家を訪れた。という感覚の方が近いかもしれない。

この国が、外務省の危険度地図によると、中程度の黄色に塗られているのが不思議だ。私が訪れたマナグアとオコタルに限って言えば、危険や怪しい雰囲気を一度も感じなかった。2018年にニカラグアで起こった闘争について調べると、凄惨な写真が次々と出てくる。ニュースの記事などをみると、これがこの地で起こっていたとはにわかには信じ難い。ある生産者によると、2018年は国の機能が麻痺していたため、コーヒーを輸出することが叶わなかったという。それによって、彼らは多くの従業員と売上を失った。

火山国であるため地震も多く、ハリケーンに見舞われることもあり、決して豊かとは言えないニカラグアという国の宝石であるコーヒーを取り扱うと思うと、その過程の一つ一つを大切にしたいと、改めて思える。