エチオピアのコーヒー流通について(2)

国際価格の変動に翻弄される生産者の収入を安定させるため、二つの大きな動きがありました。

一つ目が、農業協同組合です。

1999年、オロミア農協(Oromia Coffee Farmers Cooperative Union)が設立されました。オロミア農協は、フェアトレード、オーガニック、レインフォレストなどの認証を取得し、オロミア州のコーヒーを、認証付きのコーヒーとして国際的に流通させることに成功しました。粗利益の70%は地方の協同組合(Primary Cooperative)に還元される仕組みです。

地方の協同組合には農協からトレーナーが派遣され、サステナビリティに配慮した生産方法を伝えます。

オロミア農協の取り組みは『おいしいコーヒーの真実(英題:Black Gold)』という映画になり、一躍注目を集めました。

その後、2008年、エチオピア商品取引所(ECX: Ethiopia Commodity Exchange)が設立されました。ECXはエチオピア政府と提携した民間企業です。ECXはコーヒーの他にも、ゴマ、とうもろこしなど穀物全般を取り扱っています。

それまで、コーヒー生産者に市場価格を知るすべはなく、マーケットにチェリーを売りに行っても価格交渉の余地はなく、品質による判断は一切なされませんでした。そこにメスを入れたのがECXでした。

ECXは、生産者に市場価格の情報を共有しました。ECXのWebサイト、取引所の電光掲示板、SMS、電話(フリーダイヤル)で、誰もが情報を入手することができるようになりました。コーヒーを九つの主要生産地に分類し、Yirgachefe G1、Sidamo G2のように等級分けしました。

農協とプランテーションコーヒー(民間企業や国が所有する農園)以外のコーヒーは、ECXにて生産地認定とグレーディングを受けることが義務付けられ、オークションで取引されるようになりました。

ここでポイントとなるのが、ECXは、当時約96%を占めていたコモディティ・コーヒーのための仕組みであり、スペシャルティ・コーヒーの流通を主眼に置いてはいないという点です。

ECXによって、エチオピアに流通するコーヒーは、生産地の地方名とグレードしか分からない状態になり、それまで、特定の精製所とダイレクトトレードをしていた輸入業者にとっては、トレーサビリティが不透明になり、信頼関係や精製所に対する投資が意味をなさなくなりました。

2009年、ECXとSCAA(現在のSCA)との協議が持たれ、Qグレーダーによる品質評価を導入するなど、スペシャルティ・コーヒー業界への歩み寄りがありました。

また、2017年、ECXは規制を緩和し、個人経営の精製所であってもライセンスを取得すれば直接輸出することが可能になりました。これによってトレーサビリティは確保されたと言えます。

この規制緩和によって、新たなスタイルの輸出業者が台頭してきています。例えば、精製技術を持った人や、コーヒー農園の土地の所有者が輸出のライセンスを取得し、個人で輸入業を開始しているのです。

2019年にオランダの輸出業者Traboccaが開催したエチオピアのオークションThe Ethiopian Cupのウィナーの中にも、そのような新星が散見されました。

2020年は、エチオピアで初めてCup of Excellenceが開催されます。これによってエチオピアのスペシャルティ・コーヒーはどのような変化を遂げるのか、注目を集めています。

参考サイト:Promar Consulting

エチオピアのコーヒー流通について(1)

前回は、エチオピアのコーヒー生産地についてお話しました。

生産地で収穫されたコーヒーは、どのような経路で流通し、私たちの手元に届くのでしょうか。コーヒーの流通の歴史と仕組みを見てみましょう。

コーヒーは、小麦やとうもろこしなどの穀物と同じコモディティ商品(価値がすべて同じ商品)で、先物取引が行われます。先物取引とは、現物ができあがる前に、あらかじめ未来の価格を決めておくことです。購入する側にとっては値上がりのリスクヘッジになりますし、販売する側にとっては未来の収入を確定できます。投機家は値上がりしそうな銘柄に資金を投入し、利潤を得ます。

アラビカ種はニューヨーク商品取引所で、ロブスタ種はロンドン商品取引所で先物取引が行われます。

アラビカ種の先物取引の銘柄は、下記の三つに分けられます。

・コロンビアマイルド(コロンビア、ケニア、タンザニアのウォッシュド)
・アザーマイルド(その他生産国のウォッシュド)
・ブラジルナチュラル(ブラジルやエチオピアなどのナチュラル)

主に需要と供給のバランスで、毎日国際価格(C-market price)が変動します。国際価格が大きく上下することで、生産者の生活は不安定になります。

1962年に、国際コーヒー機関(ICO: International Coffee Organization)が、国際コーヒー協定(ICA: International Coffee Agreement)を定めました。流通するコーヒーの量を制限することで、需要と供給のバランスを取り、価格の安定を図ったものです(輸出割当制度)。しかしながら、生産国や消費国の不満、アメリカのICO脱退を契機に、1989年に輸出割当制度は停止しました。

輸出割当制度の停止後も、コーヒー消費量は年々増え続け、投機の対象としての人気は衰えず、コーヒーの国際価格は大きく上下しています。また、最大の生産国ブラジルの生産量や経済が大きく影響します。2019年にコーヒーの国際価格は大暴落して、生産価格より国際価格が安くなるとも言われましたが、その背景には、ブラジルが豊作であったこと、レアル安(ブラジルの通貨が安くなった)がありました。

エチオピアの生産量は世界の約5%と、国際価格に与える影響は少ないにも関わらず、先物価格で取引されるので、生産者は翻弄されてしまいます。そのような状況の打開策が、いくつか立ち現れます。

(つづく)

エチオピアのコーヒー生産地について。

エチオピアのコーヒー生産地は、大きく四つのタイプに分かれます。

フォレストコーヒー(生産量の約10%)
森林に自生する天然のコーヒー。最も伝統的な生産地ですが生産効率が低いので、後述のセミ・フォレストやガーデンコーヒーにどんどん移り変わっています。JICAが2003年より森林コーヒーを保全する活動を開始しています。

セミ・フォレストコーヒー(生産量の約35%)
天然のコーヒーの森を手入れしたもの。雑草の除去、日照量の調整のための伐採などが行われます。土地の所有者は存在します。

ガーデンコーヒー(生産量の約50%)
農家の裏山や庭に、農家の手によって植えられたコーヒー。バナナやアボカドと一緒に植えられることが多く、収穫したら精製所、農協などに持ち込んで現金化します。

プランテーションコーヒー(生産量の約5%)
または、エステイトコーヒーとも呼ばれます。民間もしくは国営の大規模農園。生産から輸出までワンストップで行う。特定の品種を植えたり、テクノロジーを活用し、生産効率や品質を上げることができます。農園名が付いているエチオピアのコーヒーは、ほとんどこちらに分類されます。ゲシャビレッジ農園などが有名です。

エチオピアのコーヒーの約90%がオーガニックで栽培されています。エチオピアの土壌や気候はこの上なくコーヒーの生育に適しているので、剪定や化学肥料はほとんど必要とされません。

車でイルガチェフェの山に入ると、コーヒー、バナナ、アボカドなどが混ざった森に囲まれます。その隙間に土壁やトタンで造られた素朴な民家が見え隠れします。柵で区切られた農園を目にすることはほとんどなく、森と庭の境界が曖昧で、コーヒーの木は生活に溶け込んでいます。

参考サイト: EtBuna