辻本珈琲 辻本智久さん

私たちが出会い、インスピレーションを受けたロースターさんにお話をお伺いするMeet the Roasters。第二回目は大阪の和泉市に焙煎所とカフェを構える、辻本珈琲の辻本さんにお話をお伺いしました。

辻本珈琲さんは2003年にドリップバッグの充填からコーヒーのビジネスをスタート。2005年に楽天市場にてオンラインショップをオープンしました。約3,000件のレビューを集めるドリップバッグからCOE受賞のスペシャルティコーヒーまで、商品は非常に幅広く、その多様性に驚かされます。また、パンにマリアージュするドリップバッグやクラッシュドコーヒーゼリーなど、コーヒーに馴染みが無くても思わず手に取りたくなるような魅力的な商品が並びます。

今後、ますます消費動向が読めなくなる中で、多様性にしなやかに応答する辻本珈琲さんのビジネスには大いに学ぶべきところがあります。私たちもこのようなスタイルのロースターさんが生産地と直接つながることに、大きな可能性を感じます。

それではインタビューをご覧ください。

辻本珈琲さんには様々な層のファンがいらっしゃると思いますが、スペシャルティコーヒーを求めて購入されるお客様と、まだ馴染みがないお客様、どちらの方が多いですか?

スペシャルティコーヒーでなければ、というお客様はまだまだ少ないですね。より広く知って頂くために、SNSやブログでの発信、ご来店されたお客様には丁寧に接客する、という基本的なアクションを地道に続けています。

オンラインショップで最も人気の商品は何ですか?

創業当時からドリップバッグが大きなシェアを占めています。オンラインショップは、特別な抽出器具を持っていなくても、スペシャルティコーヒーに限らず、コーヒーの楽しさ、美味しさをお届けできたらいいな、と思ってスタートしました。

実は先日、オンラインでドリップバッグを購入させて頂いたのですが、淹れ方の説明が「約何グラム」や「およそ」というような表記をされていて親しみやすさを感じました。何か意図はあるのでしょうか?

有り難うございます。これに関してはまだまだ工夫できる事はあると思っているのですが、多様性の理解ということですね。美味しい淹れ方の答えは、コーヒーを飲む方がそれぞれ持っていると思うので、あくまで目安としてお伝えします。自分が好きな味わいを伝えることも大切にしていますが、それを飲む方が美味しいと感じるかは別の話なので、あくまで目安ですね。

コーヒーブームは一旦落ち着いたと言われていますが、まだまだ新しいロースターやカフェは増え続けています。辻本さんの視点で、日本のコーヒーシーンは今後どのように変化すると思われますか?

コーヒーのビジネスは参入障壁が低く、良いイメージを抱きがちですが、ビジネスを継続することの難しさが、やってみると分かると思うんですね。会社に資本と体力があれば続くかもしれませんし、また「好き」と「ビジネス」のバランスが取れていると続くのかな、と思います。日本は今後コロナの影響に加え、来年のオリンピック以降、経済の低迷が予想されるので、その割にはスペシャルティコーヒーを供給するお店は多すぎるのかな、という印象はあります。嗜好品の選択肢も多い中で、コーヒー、なかでもスペシャルティコーヒーに特化して生き残るのは、よほどの努力とバランス感覚がないと難しいのではないのかな、と思います。僕が大好きなコーヒー屋さんの先輩で、スペシャルティコーヒーにこだわって、その可能性を信じて、たくさんのお客様に支持されているお店はもちろんあって、僕もそうあれたらいいなと思っていますが、そこまで辿り着くのは決して簡単なことではないと思うんですよ。「美味しいコーヒーを多くの人に届けたい」という大きな目的からブレずに、続けていく努力、工夫は求められるのかな、と思います。そして、コーヒーの美味しさ、新鮮さは重要ですが、それと同じくらい、もしくはそれ以上に「またここで買いたいな」とか「またこの人が淹れたコーヒーを飲みたいな」と思って頂くことが重要だと思います。

HPやブログを拝見していても、人のあたたかさを感じました。

社名でもある「すてきなじかん」をお客様にお届けして愛される会社になる、そして、一緒に働く人とともに学び、笑顔あふれる素敵な会社にする、という二つの理念を掲げていて、その理念を通して豊かな人生を過ごす、ということを大事にしています。僕一人では何もできないんですよ(笑)みんながいるからできるし、一緒に働くスタッフもそう思ってくれているので、1+1+1=3ではなく、5にも10にもなるような仲間づくりができたらいいなと思っています。

今後、生産地とどのように関わりたいと思いますか?

まだ「こうありたい」とか「未来を一緒に描きたい」というより、自分の好奇心から生産地の状況を知りたい、という段階です。生産地を訪れて、コーヒーの可能性や多様性を肌で感じ、それをスタッフを介してお客様に届けたいと思っています。生産者さんの顔を知ることでより大事にコーヒーをお客様にお届けできる。その結果としてお客様から「この生産者さんのコーヒー美味しかったよ」という言葉を頂き、それを生産者さんに届ける。そんな輪を少しずつ広げていけたらいいな、と思っています。

いかがでしたか?長いご経験と確かな実績を持つ辻本さんですが、その謙虚で優しい語り口から辻本珈琲さんの本質を感じることができました。何よりも人を大切にする姿勢が、多くのファンを惹きつけているのだと思います。また、今後のコーヒービジネスにおいては、ロースターやバリスタなどの技術者だけではなく、企画や商品開発を担う人材、もしくはロースターやバリスタにその力が必要とされると感じました。商品づくり、お店づくり、そして人材においても、こだわりとしなやかさのバランスを取ることが成功の鍵かもしれません。

辻本さん、貴重なお時間を頂き、有り難うございました!

Interview: 藤井優衣
Text: 山田彩音

辻本珈琲
TSUJIMOTO coffee 楽天市場店

aoma coffee 青野啓資さん

私たちが出会い、インスピレーションを受けたロースターさんにお話をお伺いするMeet the Roasters。第一回目は、aoma coffeeの青野啓資さんにお話をお伺いしました。青野さんは七年前、大阪のELMERS GREENでロースターとしてのキャリアをスタートし、二年前に会社に所属しながら浅煎りに特化したEMBANKMENT Coffeeを立ち上げました。今回、京都のWeekenders CoffeeさんからProbatone5の焙煎機を受け継ぎ、独立開業されます。

aoma coffeeさんが選んだ大阪・船場は、心斎橋の北側、ビジネス街本町の東側にある、少し落ち着いたエリア。近隣には昔ながらの繊維問屋が立ち並びます。お店の隣にはギャラリーや素敵なショップを擁する丼池繊維会館があり、これからどんなエリアになっていくのか期待が高まります。

最初期からTYPICAのフィロソフィーに共感して頂いている青野さんに、これまでのこと、これからのことをお伺いしました。

会社員から個人店へ

独立はしたいと思っていましたね、ずっと。会社員として七年間勤めましたが、二、三年くらい経った頃から自分でやりたいな、と思い始めました。エンバンクメントコーヒーは僕が会社にプレゼンして二年前に立ち上げたのですが、五年前にはああいうスタイルはいけると思っていました。オニバスコーヒーさんなど浅煎りに特化したロースターが、東京ですでに活躍しはじめていて、絶対に大阪でもいけると思っていましたが、周りを説得するのが難しかった。浅煎り専門なんて絶対無理、と。この七年間コーヒーをがっつりやってきて、ウィークエンダーズさん、コーヒーカウンティさん、オニバスさんは常に意識していて、それを見ながら、自分は会社員だったので、同じ土俵には立ててないな、とは思っていました。

大阪を選んだ理由

お店の場所は京都と大阪で探していたのですが、京都は狭い街の中にすでにたくさんコーヒー屋さんがあるけど大阪はまだ少ないので、大阪にしようとは思っていました。そんな中たまたまこの物件を紹介してもらって、ここでいっか、と(笑)。これから大阪でスペシャルティコーヒーを盛り上げるのは、本音を言うと難しいと思います。僕らが取り扱うコーヒーは決して安くはないし、カルチャーとして広げていく必要があると思います。それにはコーヒー屋さん同士で連携を取るのも大事だけど、他の分野で同じ方向を向いている人たち、例えばレストランのシェフなどと一緒に何かできた方が、お客さんからすると分かりやすいかもしれません。無農薬の野菜を使っているとか、地元の食材を使っているとか、そういうこだわりを持った人たちと大阪から発信するフェスとかできたら面白いですね。

お店も一人でやっていてもつまらないので、コーヒーに限らずいろんな分野のスキルを持った人と少数精鋭のチームをつくりたいですね。コーヒーの技術はやっていれば身につくし、キャラが大事だと思っています。僕はゆくゆくはカウンターには立たず、お店を伸ばすために外に出ていく感じにしたいと思っています。

僕らにはない豊かさ

スペシャルティコーヒーを扱っていると、コーヒー生産者との関係性の大切さは感じるのですが、彼らに対して何ができるのかということはあまりピンと来なかったんです。生産者は発展途上国の貧しい人たちで、その人たちのために何ができるのか、自分の目で見てみないと分からないと思っていました。去年はじめてコロンビアの生産地へ行ったのですが、そのとき、生産者から僕らにはない豊かさを見せつけられました。みんなプライドを持ってコーヒーを作っていて、ある意味、日本人よりも豊かで。だから結局、ロースターと生産者が対等な立場でコーヒーの未来のために動いていくのが大事だと思ったんです。そんな話を以前どこかでTYPICAさんもしていて、同じだ、と思いました。それは生産地を訪れないと分からなかったことだし、これからも自分の目で見ないと何も言えないです。今後本当の貧しさを見せつけられるかもしれない。僕らが生産者のためにできることは、コーヒーをたくさん消費することだと思っています。最高品質の美味しくて面白いコーヒーだけを扱いたいとはまったく考えていません。小さいロースターでは難しいので、規模を大きくして、それ以外の「そこそこ美味しいコーヒー」も含めてたくさん販売したいと思っています。

大阪でまた新たなスタートを切る青野さん。職人的なイメージの方でしたが、経営者としても広い視野を持ち、新たなコーヒーカルチャーを育んでいこうという気概を感じました。生産者との関係性についてTYPICAと共感が深く、いつも応援して下さる青野さんとの未来が楽しみです!

Interview: 藤井優衣
Text: 山田彩音

aoma coffee

オンラインプレゼンテーションを開催します!

私たちはグアテマラのPrimavera CoffeeとニカラグアのPeralta Coffeesとパートナーシップを組み、彼らと日本のロースターさんをダイレクトにつなぐ仕組みを整えました。

前回のエチオピアはプレゼンテーションカッピングを開催しましたが、今回は、郵送で彼らのニュークロップのサンプルをロースターさんにお届けしています。

郵送ですと、仕組みのこと、生産地のことを、ロースターのみなさんに直接お伝えできないので、オンラインプレゼンテーションを開催することになりました!

スペシャルゲストもお招きする予定です。
是非ご参加下さいね。

TYPICA オンラインプレゼンテーション

◎日時
5月11日(月)21時〜
5月12日(火)21時〜
5月13日(水)21時〜
 
◎内容
私たちのビジョンや仕組みを改めてご紹介。そして、今回お届けしたサンプルの詳しい解説とともに、コーヒー生産者さんやロースターさんをゲストに迎え、トークを繰り広げます。
 
◎参加方法
Zoomウェビナーにて開催します。
開催日時にこちらのURLをクリックして下さい。
ウェビナーID:846 6876 1144
 
・スマートフォンでのご参加はZoomアプリのダウンロードが必要です。PCは不要です。
・ウェビナーですので参加者のお顔や音声は映りません。
・チャットでコメント、ご質問が可能です。
・お名前とメールアドレスの入力が必要です。
・もちろん参加無料です!お気軽にご参加下さい。

PrimaVera Coffee

Introduction
プリマヴェーラコーヒーは、4世代続くコーヒー生産者です。創業者のナディーンは31歳の女性で、農園主で輸出業者の父を受け継ぎ、2013年に同社でスペシャルティ・コーヒーのマイクロロット部門を立ち上げました。彼らは自社所有の農園のほかに、ウエウエテナンゴやフライハーネスを中心とした250件にも及ぶ小規模生産者と繋がりを持ち、そのコーヒーチェリーを自社のミルで精製しています。なぜ最も有名な産地アンティグアではなく、ウエウエテナンゴやフライハーネスに注力しているかというと、アンティグアはすでに大きな輸出業者に独占されており、価格は高く、面白いロットが手に入らないとのことでした。彼らは日本では手に入りにくいマイクロロットへのアクセスを可能にする、貴重な存在です。彼らがユニークなのは、自身がエクスポーターとしてだけではなく、インポーターとしても機能している点です。北米とオランダにオフィスを構えています。アジアにおいてはインポーターの機能が無いので、TYPICAへの参画が実現しました。彼らのコーヒーを日本に紹介するのは、私たちが初めてとのことです。

Person
私たちがプリマヴェーラコーヒーと出会ったのは、昨年のAmsterdam Coffee Festivalでした。たまたま参加したカッピングセッションで、彼らのコンセプトとクオリティに共感し、コミュニケーションを取るようになったのです。創業者のナディーンは、アメリカの大学で学び、イギリスで金融の仕事をして、やっぱりコーヒーの仕事がしたくて故郷に帰ってきたそうです。偶然、若かりし頃のエチオピアのモプラコ社の代表エレアナと同じストーリーです。小柄で、可愛くて、時折ファニーな彼女が世界中のバイヤーとビジネスをしている姿は、とてもかっこよく見えます。同世代の女性ということもあり、ざっくばらんに話せるナディーンとの未来がすごく楽しみです。

Location

HQ

Dry mill at Santa Rosa

Transparency
彼らは自身のHPにてすべてのプロセスにおけるコストと価格を開示しています。

Peralta Coffees

Introduction
ペラルタコーヒーは、20世紀初頭から続く伝統ある生産者です。NYのニカラグア専門ロースターCafé Integralのオーナー、Césarに紹介してもらいました。ペラルタコーヒーは、ニカラグアの名産地ディピルトとサンフェルナンドに農園を所有し、モソンテに広大なドライミルとカッピングラボを所有しています。様々な実験的な精製方法を積極的に採用し、ユニークなコーヒーを作り、世界中の名だたるバイヤーに紹介しています。

Person
オーナーのオクタヴィオは、優しく繊細な心を持つ男性です。コーヒーや人への接し方に、深い思いやりを感じます。彼らのコーヒーの品質はおしなべて高く、その理由はそのような「心」にあると確信しています。

彼は優れたコーヒー生産者でありながら、優れた経営者でもあります。オクタヴィオの自宅はオコタルにありますが、彼は自宅の隣で、精肉のビジネスも営んでいます。日中、自宅の中庭を解放して、彼らのお肉を提供するちょっとしたレストランをオープンしています。そのレストランで食べた食事が、今回の旅で最も美味しい食事となりました。

About Farms

ペラルタコーヒーは5つの農園を所有しています。

Finca Santa Maria de Lourdes サンタ・マリア・デ・ルルド農園
標高: 1150〜1300m
面積: 32ha

険しい山道を四駆のバンで登り切ると、山の谷間に小さなウェットミルが見えます。農園の道中には、コーヒーチェリーを詰める袋を活用したゴミ箱を頻繁に見かけました。自然環境の保護への配慮も行き届いています。自然豊かで静かな環境で、農園を見下ろす崖の上に座っていると、鳥の声しか聞こえません。ウェットミルではPenagos製のパルパーを使用しています。この農園は、ペラルタの農園の中で最後に収穫が終わる農園です。収穫は1月から始まり4月まで続きます。平均年間生産量は、1000袋(69kg袋)です。

Finca Coffee Libre コーヒー・リブレ農園
標高: 1600m

韓国の有名ロースターCoffee Libreが所有する農園です。Coffee LibreのオーナーPilは、ニカラグアやグアテマラに農園を所有し、ダイレクトトレードを実現しています。彼はペラルタのドライミルの近くで結婚式を挙げるほど、この地に愛着を持っています。彼らの農園を訪れカッピングさせて頂いたところ、ユニークで品質が高かったので、日本のロースターさんにオファーさせてもらえるよう頼んでもらいました。山の頂上付近にあるこの農園は、白い花畑に囲まれた天国のような農園です。コーヒーの木はよく手入れされており、とても健康な印象を受けました。Pinhalense製のパルパーを採用したウェットミルでは、Anaerobic Lactico(牛乳を加えた嫌気性発酵)など、ユニークな精製方法が多く試されています。

Finca El Bosque エル・ボスケ農園
標高: 1250〜1560m
面積: 42ha

エル・ボスケ農園は、三つの丘の中腹に跨っています。ウエットミルではPenagos製のパルパーを使用し、非常に少ない水で精製を行うことが可能です。また、この農園は豊かな水源に恵まれているので、農園に必要なすべての電力を水力発電で賄うことができます。レインフォレスト・アライアンスの認定を受けており、すべてのコーヒーが日陰栽培で生育されています。平均年間生産量は、1200袋(69kg袋)です。

Finca La Argentina ラ・アルジェンティーナ農園
標高: 1150〜1300m
面積: 75ha

Finca Samaria サマリア農園
標高: 1320〜1450m
面積: 45ha

サマリア農園は、ホンジュラスの国境に接した農園です。隣の農園まで歩いて行くと、国境を越えるほどの近さです。自生するシェイドツリーを利用し、様々な品種が育まれています。

Location

HQ

Dry mill at Mozonte

オクタヴィオの自宅兼レストラン

Transparency
彼らはコーヒーの生産、精製、輸出を一貫して行っています。様々な区画、品種、精製方法のマイクロロットは、収穫からロースターの手に渡るまで、完全に追跡可能です。

Nicaragua 2020

*この記録は2月に中米へ渡航した時に記した文章である。新型コロナウィルス以降、世界の見え方がまったく変わってしまったことに驚く。

ニカラグアからグアテマラへ移動する飛行機でこれを書いている。一時間ほどのフライト。眼下には隆起した大地や名もない湖が見える。まだまだ目に映していない風景、出会っていない人々が無限に存在することに、とてつもない自由さを感じる。

2018年の政治闘争によってさらに危険なイメージが強まったニカラグアだが(実際何人もの人に「ニカラグアは近年危険みたいだけど大丈夫?」と心配された)、実際に身を置いてみると、穏やかで、どこか日本に似た印象の国だった。

どこか、というかかなり、と言った方が近いかもしれない。首都マナグアからコーヒー生産地にほど近いオコタルまで車で移動したのだが、まるで日本の田舎のように田んぼが延々と続き、時々郊外型の街が現れる。ガソリンスタンド、ちょっとした飲食店。田舎の方まで来ると鄙びた温泉街のような風情があり、山に入ると松の森に囲まれ、大小の石が転がった清流が流れている。すれ違うのはトヨタなどの日本車ばかり。「ここって北陸かどっかだっけ?」と、少し倒錯した感覚を覚えた。人の感じは温かく控えめで、多くの人は英語を話さず、それも日本のよう。観光客は少なく(特にオコタルは、世界的なコーヒー名産地ではあるが、観光資源があまりない。欧米のバックパッカーを一組しか見なかった。アジア人には会わなかった)、のんびりとした雰囲気だった。ニカラグアの滞在は、エキサイティングな冒険というより、田舎のおじいちゃんの家を訪れた。という感覚の方が近いかもしれない。

この国が、外務省の危険度地図によると、中程度の黄色に塗られているのが不思議だ。私が訪れたマナグアとオコタルに限って言えば、危険や怪しい雰囲気を一度も感じなかった。2018年にニカラグアで起こった闘争について調べると、凄惨な写真が次々と出てくる。ニュースの記事などをみると、これがこの地で起こっていたとはにわかには信じ難い。ある生産者によると、2018年は国の機能が麻痺していたため、コーヒーを輸出することが叶わなかったという。それによって、彼らは多くの従業員と売上を失った。

火山国であるため地震も多く、ハリケーンに見舞われることもあり、決して豊かとは言えないニカラグアという国の宝石であるコーヒーを取り扱うと思うと、その過程の一つ一つを大切にしたいと、改めて思える。

第一回全国キャラバンを終えて。

昨年末からこの春にかけての日々は、嵐のように過ぎ去っていった。

11月にアムステルダムへ移住し、12月にエチオピアを訪問。2月にグアテマラとニカラグアを訪問し、3月に東京から福岡までのプレゼンテーションカッピング。その間、世界中を席巻した新型コロナウイルス・・・。

ウイルスの影響の間をすり抜けるように国から国へ、街から街へ移動し、朝目が覚めると、今自分がどこにいるのか、一瞬分からななくなるような日々だった。

コーヒー生産地を訪れるのは、私の個人的な夢であり、それが半年の間に、瞬く間に叶ってしまい、正直その幸せを実感する間も無かった。今から文章に残すことで反芻し、みなさんに還元したい。

日本に一時帰国し、福岡でラストのイベントを終えて、実家の兵庫県に戻り、やっと心と身体を今ここに落ち着けて、この文章を書いている。

東京から福岡まで、7都市8箇所のプレゼンテーションカッピング(私たちは全国キャラバンと呼んでいる)は、想像をはるかに超えた数のロースターさんから共感を得られた実感がある。90件ものロースターさんと繋がり、112名の方にカッピングにご参加頂いた。そして、参加ロースターさんの半数からご予約を頂いた。しかも、誰もが知る実力派のロースターさんほど予約率が高かった。それは、このTYPICAの構想がロースターさんのニーズに合致したのか、単純に生産者さんが提案してくれた生豆のクオリティが高かったのか、そのどちらもなのか・・・。いずれにせよ、嬉しい誤算だった。

そして、シンプルに「ロースターのみなさんは本当にコーヒーが好きで、真剣に向き合っている」と感じた。コーヒーは嗜好品で、無くても生きてはいける。ウイルスが行動も精神も支配しつつある現状から見ると、ますますそう思える。実際に「こんな状況でも、プレゼンテーションカッピングを開催するのですか?」という声もあった。でも、コーヒーはとんでもない魅力と中毒性を備えた飲み物であり、ある一部の人にとっては間違いなく生活必需品である。コーヒーの香りを楽しんだり、ワイングラスを傾ける時間は、こんな状況だからこそ、必要なのかもしれない。

こんな状況下で、きっとお店も大変な中、プレゼンテーションカッピングに参加して下さったロースターさんに改めて感謝を伝えたい。そして、コーヒーを心の必需品とする方へ、無理の無い範囲で、美味しいコーヒーを提供し続けて欲しい。

全国キャラバンを通じて、課題が浮かび上がり、悔しい思いをした一面もあった。夜の反省会で全員で泣いたこともある。でも、それは一つ一つクリアにしていくしかない。どんな仕組みであれば、生産者さんにとって、ロースターさんにとって、相乗効果が生まれるのか。特別なコミュニケーションが生まれるのか。

私はAirbnbの創業物語が好きで、創業者のインタビューなどを探してよく読んでいた。彼らは資金調達時、投資家に「本当に全く知らない赤の他人を自分の家の泊まらせるバカがいるの?」なんて言われたらしい。上手く資金調達できなった彼らは、ユーザー体験を調査するために、ニューヨークのホストの家を予約して泊まりに行き、一緒にビールを飲みながらビジョンを語り支持者を得た、というエピソードがある。今回の全国キャラバンは、草創期の私たちにとってそんな感じのものだったかもしれない(恐れ多いし、ビールではなくコーヒーだったけれど)。

Airbnbも、Uberも、すでにあるもの(家やドライバー)とユーザーのつなげ方を変えただけで、世界を変えた。TYPICAもそんな存在でありたい。ロースターさんが生産地と直接つながり、コミュニケーションを取り、経済透明性を確保することで、スペシャルティ・コーヒーのサステナビリティにポジティブな影響を与えることができると、私たちは信じている。

4月の第一週から、グアテマラとニカラグアのサンプルをひっさげて回る二回目の全国キャラバンが始まる。一回目にご参加頂いたロースターさんは勿論のこと、ご予定が合わず、また躊躇していたロースターさんにも是非参加して頂きたい。一緒にTYPICAというプラットフォームを育むメンバーになって欲しい。きっと、日々の生豆の仕入れが、ちょっと楽しくて、奥深いものになるはずです。

山田彩音

Oromia Coffee Farmers Cooperative Union

Introduction

オロミア農協についてはこちらのページで詳しく説明しています。
エチオピアのコーヒー流通を語るとき欠かせないのは、協同組合の存在です。それまでルールや知識なく商売をしていた小規模生産者に仕組みが与えられたのです。日本とは縁が深く、マーケティング部門のElsaは、昨年フェアトレードの講演会に呼ばれて大阪を訪れたと言っていました。地方の精製所のマネージャー、Amunaと一緒に、GujiにあるKilenso Rasa cooperativeのドライミルとウェットミルを訪れました。企業が運営する精製所より素朴な印象ですが、村と精製所が溶け込んでいて、こどもが集まり、協会からは歌声が聞こえるような素敵な場所でした。また、ガーデンコーヒーとセミ・フォレストコーヒーをそれぞれ訪れ、その違いを肌で感じました。

Person
Kilenso Rasa cooperativeを案内してくれたAmunaは、誠実で情熱的な印象の青年です。全力で彼らのコンセプトを伝えてくれ、丸一日かけてGujiの精製所と農園を巡ってくれました。自分の仕事に誇りを持っているようで、一緒にいて気持ちの良い人でした。

Location

Office in Addis

Kilenso Rasa cooperative

Semi-forest coffee farm

Transparency
オロミア農協は、純利益の70%を地方の協同組合(Primary Cooperative)に返還し、協同組合は組合員に返還します。

Sustainability
ECOCERT, JAS, Fair Trade, Rain Forest Alliance, UTZなどの認証を取得しています。

Photo Gallery

Moplaco Trading PLC

Introduction
モプラコ社はエチオピアで最も古い輸出業者の一つです。代表はHeleanna Georgalis。父のYanni Georgalisは、幼い頃から麻袋の印刷と計量の仕事を始めました。その後、Harrarに自社の精製所を作り、エチオピア全土に事業を拡大しました。モプラコ社は、父ヤンニの代から日本と親交が深く、ヤンニとエレアナは何度も日本を訪れています。モプラコ社は主要生産地に自社の精製所を構え、独自の品質を追求しています。また、エチオピア西部のShekaには自社の農園を所有しています。その農園はフォレスト・コーヒーで、コーヒーの他に、蜂蜜やターメリック、黒胡椒なども生産されています。

モプラコ社のヘッドオフィスは、首都アディス・アベバにあります。オフィスは倉庫街にあり、隣には倉庫の一部を改装したカフェ、Galani Coffeeがあります。腕利きのバリスタが、モプラコ社のコーヒー豆を使ったクリーンなフィルターコーヒーや、エスプレッソを淹れてくれます。おしゃれなインテリアが配された店内では、欧米の旅行者やビジネスマンがコーヒーを楽しんでいて、エチオピアにいることを忘れてしまうような空間です。

モプラコ社のみなさんは、穏やかで思いやりの深い方ばかりです。どの精製所もきちんと整理され、隅々まで掃除されていました。このような環境で精製されたコーヒーは、品質が高いに違いないと確信しています。

Person
私とエチオピアの関係は、エレアナに送った一通のメールから始まりました。彼女がそのメールに返信をくれなければ、きっとなにも始まりませんでした。母親のように優しく、ときに厳しく、私にエチオピアのイロハを丁寧に教えてくれ、様々な人を紹介してくれたのです。エレアナはヨーロッパの企業で働いていましたが、2008年、エチオピアでコーヒーのビジネスを継ぐことを決めました。国際感覚と経営者としての芯の強さ、そして女性らしい思いやりがビジネスを向上させたのだと感じます。

エレアナのオフィスを訪れたとき、彼女はスーツを着た大柄なアフリカ系の男性二人とミーティングをしていました。いつもとは違う強い口調で、時々ジョークを交えながら交渉する姿は、いつもの穏やかなエレアナとは違い、少し驚きました。ミーティングが終わると、エレアナはまたいつもの母親のような優しい雰囲気に戻り、私の隣に座りました。そのギャップに、エチオピアでビジネスの第一線を走り、様々な物事を乗り越えてきたエレアナの人生を垣間見たような気がしました。

どこまでも思いやりが深く、ビジネスウーマンとしても一流のエレアナを、私は深く尊敬しています。

Transparency
モプラコ社は、数多くの小規模生産者からチェリーを購入しており、金額はマーケットプライスに準じて支払われます。コーヒーチェリー1kgあたり、29Birr(約98円)支払います。6kgのチェリーから1kgのウォッシュドコーヒーが作られます。

Sustainability
モプラコ社は、コミュニティへの貢献の方法として、チェリーの購入価格を上げることを選択しません。購入価格を上げると無用な競争が生まれ、マーケットを乱すことになるからです。そのかわり、彼らは、Sidamo、Yirgacheffe、Shekaにある小学校に、毎年10,000USD(約100万円)投資しています。

Location

Office at Addis

Drymill at Yirgacheffe

Drymill at Chelelektu

Offering 2019

Sheka Kawo Kamina G1 Natural
Yirgacheffe Wonago Abaawelu G1 Washed
Yirgacheffe Gedeb Tamerate Alemayheu Gobu G1 Washed
Yirgacheffe Adame Moplaco G1 Natural
Yirgacheffe Anchaebe Moplaco G1 Natural
Yirgacheffe ECX G1 Washed

Photo Gallery

Wete Ambela Coffee

Introduction
Wete Ambela Coffeeは、生産者のMekuria Mergiaが立ち上げた個人経営のコーヒーカンパニーです。2018年創業のスタートアップで、YirgacheffeとGujiにそれぞれ精製所を、そしてGujiのAnferara(Mesina)に自社の農園を所有しています。エチオピアでは大手の輸出業者やエステイトコーヒーが主流である中、彼らのような個人経営の生産者は注目を集めています。初のクロップはヨーロッパや北米の輸入業社に高く評価され、カップオブエクセレンスに先駆けて2019年に行われたTraboccaのプライベートオークションで入賞も果たしました。

私は彼らのインディペンデントな姿勢に興味を持ち、リサーチを重ね、彼らとコンタクトを取りました。彼らはイルガチェフェとグジの精製所に招待してくれましたが、季節外れの集中豪雨によって道路が濁流で遮断され、グジへ行くことは叶いませんでした。イルガチェフェの精製所は、感動的なロケーションでした。ガイドがいなければ見つけられないような目立たない入り口から細い道を抜けると、山々を見渡せるような、広々とした眺望が広がります。後日、アディス・アベバにある彼らのオフィスを訪ねました。がらんとした、新しいのになぜか廃墟感が漂うビルの一角に、彼らのオフィスはありました。応接室にはまだ新しいソファと事務机がいくつか置かれていました。ここから彼らの物語が始まる。そんな予感を感じさせる場所でした。

Person
代表のMekuria Mergiaは長年コーヒーに携わり、小規模生産者と精製所をつなぐ仲買人のような仕事や、精製に関する仕事をしていました。2017年、ECXの規制が緩和され、ライセンスを取得すれば個人所有の精製所とバイヤーが直接取引ができるようになったことを契機に、この会社を設立しました。貫禄のある風貌をしていますが、ビジネスの感覚は鋭く、SNSでのコミュニケーションにも長けています。マーケットを熟知し、リテラシーが高い彼がこれから何を仕掛けるのか、とても楽しみです。

Location

Office at Addis

Wetmill at Yirgacheffe

Transparency
彼らは小規模生産者からチェリーを購入しており、コーヒーチェリー1kgあたり、0.9USD(約94円)支払います。100kgのチェリーから15kgのパーチメントコーヒーが作られます。

Sustainability
コーヒーチェリーを購入する際に小規模生産者名と納品数量を登録し、クオリティが高かった場合、年の終わりに追加の賃金を支払います。また、すべてのサプライヤーのこどもに学用品を提供しています。

Offering 2019

Yirgacheffe Wote Konga G1 Natural
Konga(コンガ)はイルガチェフェ地区にあるケベレ(=村)です。この地区は長年にわたり、高品質なコーヒーを生み出すエリアとして発展してきました。肥沃な土壌、最大2,200mの高地、コンスタントで豊富な雨、地元の小規模生産者の知識がその要因です。

Guji Hambela Wamena G1 Washed / Natural
Benti Neka(ベンチ・ネカ)はグジ地区にあるケベレ(=村)です。このウォッシング・ステーションには、700以上の小規模生産者からコーヒーチェリーが届きます。グジ地区は北隣のイルガチェフェ地区に比べて少し標高が低く、平均気温は約2度高くなります。農地はほとんど自然の森に近く、小規模生産者はそれぞれ120本くらいの樹木しか所有していません。もちろん農薬は使用されず、堆肥や落ち葉をまくくらいです。収穫期には、小規模生産者は家族総出でコーヒーチェリーのピッキングを行い、精製所に持ち込みます。精製所では、コーヒーチェリーの熟度を評価する際、チェリーが重ならないように留意して広げるため、完熟したチェリーのみが精製されます。

Yirgacheffe Gedeb G1 Washed / Natural

イルガチェフェの南部に位置するGedeb(ゲデブ)エリアは、イルガチェフェの南部に位置します。数千件の小規模生産者が居住しており、今世界で最も注目を集めるコーヒー生産地の一つです。

Photo Gallery